2005 Fiscal Year Annual Research Report
薬物副作用発現における「遺伝子-脳内物質-臨床症状」パラダイムの検証と確立
Project/Area Number |
16790308
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田代 学 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 講師 (00333477)
|
Keywords | ポジトロン断層法(PET) / 抗ヒスタミン薬 / 血液脳関門 / 薬物鎮静作用 / 遺伝子多型 / p糖タンパク質 / 自動車運転 |
Research Abstract |
【臨床研究1】健常被験者約20名を対象として鎮静性坑ヒスタミン薬であるケトチフェンおよび非鎮静性抗ヒスタミン薬オロパタジンを被験薬とし、^<11>C-ドキセピン(ヒスタミンH1受容体のリガンド)をトレーサーに用いたPET検査を行って両薬剤の鎮静作用を脳移行性の差として客観的に評価し、その成果を抗ヒスタミン薬に関する初のプラセボ対照PET試験として論文発表した。 また、鎮静性抗ヒスタミン薬のヒドロキシジンまたは非鎮静性抗ヒスタミン薬のフェキソフェナジンを服用した被験者において、主観的眠気、認知機能、野外実車運転によるブレーキ反応時間に関して、携帯電話使用の有無による影響も加味した多面的データを収集し、その成果も論文発表した。 【臨床研究2】40名の被験者を募集して血液サンプルを採取し、PCR-RFLP法などによりp-糖蛋白をコードするMDR遺伝子の主要な多型(C1236T、C3435T、G2677A/T変異など)を調べた。遺伝子多型の割合は、これまでに日本人で報告されているデータとほぼ一致した。そのうち24名において^<11>C-ドキセピンをトレーサーとしたPET検査を行ない、薬剤脳移行性の差と遺伝的多型の関係を評価した。PETにより計算された薬物ヒスタミン受容体占拠率の値をMDR遺伝子多型にしたがって分類しなおしたところ、変異型間で若干の差異が認められた。すなわち、野生型ホモの個体に比して変異型ホモの個体では薬剤の脳移行性が若干亢進しているという、「遺伝子変異」と「脳内物質」の移行性の差異を結び付ける成果が得られた。しかしながら、その「臨床症状」への影響は比較的小さく、最終的な結論を出すには更なる検討を要するものと考えられた。以上の成果は日本薬理学会および日本核医学会等ですでに報告を行い、成果をまとめた論文は現在投稿中である。
|
Research Products
(8 results)