2006 Fiscal Year Annual Research Report
薬物副作用発現における「遺伝子-脳内物質-臨床症状」パラダイムの検証と確立
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16790308
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田代 学 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 講師 (00333477)
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Keywords | ポジトロン / PET / ヒスタミン / 遺伝子多型 / 脳活動 / 脳マッピング |
Research Abstract |
健常被験者を対象とし、鎮静性坑ヒスタミン薬および非鎮静性抗ヒスタミン薬のフェキソフェナジンやベポタスチンを前投薬して[^<11>C]ドキセピン-PET検査を行ない、薬剤の脳移行性が鎮静作用の強さと相関することを確認し、抗ヒスタミン薬に関する初のプラセボ対照PET試験として論文発表した。次に健常被験者の血液サンプルからp糖蛋白をコードするMDR遺伝子の主要な多型(C3435T、G2677A/T変異など)を調べ、[^<11>C]ドキセピンをトレーサーとしたPET検査を行ない、フェキソフェナジンの脳移行性が遺伝子多型の種類によって異なるかどうかを検討した。その結果、薬物ヒスタミン受容体占拠率の値をMDR遺伝子多型にしたがって分類しなおしたところ、変異型間で若干の差異が認められた。すなわち、野生型ホモの個体に比して変異型ホモの個体では薬剤の脳移行性が若干亢進しているという、「遺伝子変異」と「脳内物質」の移行性の差異を結び付ける成果が得られた。しかし「臨床症状」への影響は比較的小さいことが示された。今回調べた抗ヒスタミン薬および認知機能試験に関しては、遺伝子多型は薬剤脳移行性に若干の差異をもたらすものの臨床症状への影響力は軽微であることを示唆した(投稿中)。 さらに野外実車運転試験を組み合わせた多面的データを収集し、鎮静性坑ヒスタミン薬の服用状態ではブレーキ反応が遅延し、携帯電話通話時にはさらにブレーキ反応が遅延することを確認した(論文発表済)。そして、抗ヒスタミン薬服用時の自動車運転中の脳機能抑制メカニズムを明らかにするための研究も[^<15>O]H_2O-PETを用いて行い、自動車運転シミュレーション中の脳活動をプラセボ服用時と鎮静性抗ヒスタミン薬服用時で比較した。その結果、おもに視覚情報処理と運動調節機能に関わる脳内部位の活動が抑制されていることが示された(現在投稿中)。シミュレーションの結果が実車運転による脳活動とほぼ一致することを[^<18>F]FDG-PETを用いて確認した(論文発表済)。抗ヒスタミン薬に誘発された眠気とプラセボ効果による自発的な眠気の脳内反応の違いも検討したが、特異的な脳内変化がまだ検出されておらず、今後のさらなる検討を要するものと考察された。
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Research Products
(7 results)