Research Abstract |
手島(2002)や手島・原口(2003)は,先行研究で用いられた尺度を参考に,養育者が安心して育児ができる環境を構築するために,子どもの発達過程に応じた養育者の育児ストレスや育児不安,育児ストレスに影響を与える個人的・社会的要因を短時間に把握できる質問紙を作成し,4ヵ月児の養育者と1歳6ヵ月児の養育者を対象に調査を実施してきた. 平成16年度の研究実績の概要を下記に示す. 1.一連の横断・縦断的調査の中から,2000年と2001年の縦断データを用いて,4ヵ月児の育児不安が1歳6ヵ月児の時にどのように変化していくのかを,平均構造を導入した平均共分散構造分析を用いて分析した.その結果,育児不安には育児ストレッサーが影響を与えており,育児ストレッサーは,発達段階によって異なることが示された. 2.2000年,2001年,2003年および2004年のデータを縦断的に分析し,養育者の育児ストレスについて,手島・原口(2003)と同じ変化が認められるかどうかを再確認し,育児ストレス尺度の信頼性,妥当性の検討を行った.その結果,育児ストレッサーが多い養育者ほど育児不安が高く,4ヵ月時に育児不安の高い養育者は1歳6ヵ月時でも高いことが再確認され,育児ストレス尺度の信頼性,妥当性が認められた. 3.一連の横断的・縦断的調査の中から,育児ソーシャル・サポート尺度の有用性や発達段階に応じた育児ソーシャル・サポートの横断的変化について検討した.その結果,育児ソーシャルサポート尺度は,精神的サポート,育児ヘルプ,居場所作りの3因子構造をしており,相関分析,重回帰分析および分散分析の結果,夫からの精神的サポートおよび育児ヘルプが重要であることが示唆された. 乳幼児健康診査で養育者の育児不安や育児ストレスを早期に把握し,対応していくことが重要であり,平成17年度は,育児ストレッサー尺度と育児不安尺度でのスクリーニングの可能性を探り,尺度の有用性や育児不安の縦断的変化について検討することで,母子保健システムに虐待の視点を取り入れた多層的な育児支援システムのあり方を考察することを計画している.
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