2004 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリア由来活性酸素生成によるシアン中毒等の細胞・臓器・個体の死の分子機構
Project/Area Number |
16790357
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池谷 博 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (30292874)
|
Keywords | 青酸中毒 / チトクロームオキシダーゼ / 虚血 / ミトコンドリア |
Research Abstract |
これまでの実験においてラットに青酸カリを経口投与し死亡させると、その濃度に応じて脳、肺、心、腎、肝などの各臓器のシアンの作用点であるチトクロームオキシダーゼ活性が低下することを報告していた。また、それらのチトクロームオキシダーゼ活性の抑制は脳と心臓で高度であることが分かっていた。さらに、低酸素下においたラットは青酸カリの影響を受けにくいことが分かっていた。そこで本年度ははじめに、神経細胞であるPC12細胞を虚血の条件としてよく用いられているグルコースと血清のない環境下に置き、細胞変化を観察した。死亡するほとんどの細胞はPI、ヘキスト等の蛍光試薬、タネル法等で観察するとネクローシスに陥っていた。一方、ミトコンドリアの電子伝達系を阻害する試薬であるDPIを投与するとほとんどの細胞がアポトーシスに陥った。この現象は心筋細胞であるH9C2細胞の方が顕著に現れていたため、以後H9C2細胞を用いて実験を継続した。H9C2細胞の虚血条件の一つである低酸素環境下での細胞の変化を観察した。0.2%の低酸素では細胞の形態学的変化は観察されなかった。細胞死の指標であるLDH活性の上昇もなく、低酸素だけでは細胞死は起こらないことが判明した。しかし、ミトコンドリアのチトクロームオキシダーゼ活性が低酸素時間依存性に上昇することが判明した。酵素活性の上昇はチトクロームオキシダーゼ・サブユニットIおよびIVのメッセンジャーRNAと蛋白増加によって引き起こされていることが判明した。さらに酵素活性の上昇は、コハク酸デヒドロゲナーゼ活性についても認められ、ミトコンドリア全体の活性が上昇していることが示唆された。低酸素によるミトコンドリア機能の上昇は、ミトコンドリアをターゲットとするシアンを代表とする各種薬毒物中毒の治療にも応用できる可能性が考えられた。
|