2004 Fiscal Year Annual Research Report
神経ガス中毒における標的タンパク質の構造解析と死因解明への応用に関する研究
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16790368
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
柘 浩一郎 科学警察研究所, 法科学第三部, 研究員 (90356204)
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Keywords | サリン / コリンエステラーゼ / 神経ガス / アダクト / 活性中心 / LC-MS / 中毒 / 有機リン系農薬 |
Research Abstract |
本年度は、化学兵器であるサリンによる曝露を証明する目的で、ヒト血液中のブチリルコリンエステラーゼ-サリンアダクトのLC-MS/MSによる分析法を確立した。 ヒト血漿より単離した精製ヒトブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)10μgにサリン100ngを添加し、サリン-BuChEアダクトを形成した。サリン処理したBuChEおよび未処理BuChEそれぞれをSDS-PAGEにかけ、BuChEに相当する86kDa付近のバンドを切り出した。切り出したゲルについて、キモトリプシンを用いてin gel digestionを行い、その後、Micromass Q-TOF2を用いたLC-MS分析を行った。 その結果、サリン未処理の試料からは活性中心のセリン残基を含む断片(m/z949)が、また、サリン処理のものからはサリンが結合し、質量数が120増加したペプチド断片(m/z1069)がそれぞれ検出、同定された。さらに、これらのペプチドのLC-MS/MS分析を行い、アミノ酸一次構造を解析した。 さらに、実際の試料を想定し、ヒト血漿(2mL)にサリン(100ng)を加えてアダクトを形成し、プロカインアミドアフィニティクロマトグラフィーおよびSDS-PAGEを用いてBuChEの精製を行い、得られた試料について上記の方法に従ってLC-MS分析を行った。その結果、精製BuChE-サリンアダクトと同様のアダクトに相当するペプチド断片(m/z1069)が確認され、実試料へも応用が可能であると考えられた。
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