2004 Fiscal Year Annual Research Report
重症潰瘍性大腸炎の内科治療効果判定における多剤耐性遺伝子(MDR)の役割
Project/Area Number |
16790374
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
山形 和史 弘前大学, 医学部附属病院, 助手 (40344600)
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Keywords | 重症潰瘍性大腸炎 / 内科治療 / 多剤耐性遺伝子 |
Research Abstract |
Farrellらは、潰瘍性大腸炎及びクローン病において末梢血リンパ球(PBL)及び上皮内リンパ球(IEL)におけるMDRの発現が、内科治療に対する不応例で強い発現を特徴とすることを報告している(Farrell RJ, et al. Gastroenterology 2000;118:279-288.)。しかし、彼らの上皮内リンパ球(IEL)、末梢血リンパ球(PBL)の検討では、外科治療を要する内科治療不応群と外科治療を要しない内科治療施行群の2群間に有意差がなく、また、実際に明確にSH抵抗例、依存例、反応例に分けてのMDRの発現について比較検討した報告はなされていない。我々は、これまでに潰瘍性大腸炎の手術標本の粘膜固有層単核球(LPMC)より分離したリンパ球(LPL)におけるMDRの発現をSH療法抵抗例、SH依存例、SH反応例の3群に分けて検討し、SH共培養下でのCD4,CD8陽性リンパ球(LPL)でのMDR陽性率が、特にCD8陽性リンパ球で健常コントロール及び治療反応例(0.1%以下)に比してSH抵抗例及び依存例(2%以上)で高いことを見いだした。この結果は、CD8陽性リンパ球(LPL)のMDR発現の高値が緩解導入可能か否かを決定できる因子となりうる可能性を示唆し、また、SH存在下でのMDR誘導効果が見られる症例では、SHのみならず、MDRにより代謝される併用薬剤に影響を及ぼす可能性も考えられた。上記の考察に基づき本年度は症例を積み重ねることが可能であった。それによって今日までの内科治療、とくにSH療法の限界を知りうるこれまでにない新しい知見が得られるものと考察できた。
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