2004 Fiscal Year Annual Research Report
急性心筋梗塞モデルでのeNOSを介する虚血領域縮小効果-分子学的機序の解明-
Project/Area Number |
16790429
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
川田 啓之 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (10343419)
|
Keywords | 急性心筋梗塞 / ischemic preconditioning / nitric oxide synthase / 心保護作用 |
Research Abstract |
1.研究目的 永久冠動脈閉塞(AMI)モデルを用いて、ischemic preconditioning(IP)による心保護効果へのendothelial nitric oxide synthase(eNOS)の関与を検討する。 2.方法 ラットAMIモデルを用いて、永久冠動脈閉塞前に虚血再灌流を行うことにより(1)AMI発症早期でのeNOS蛋白の発現と局在をWestern blot法および免疫組織染色により検討、(2)eNOS遺伝子の発現をreal time PCR法により検討、(3)AMI発症後6時間での虚血領域での血管径、AMI発症後6時間および3日での虚血領域と梗塞領域のサイズを計測した。さらに、(4)NOS inhibitorであるN^G-nitro-L-arginene methyl ester(L-NAME)投与モデルおよびprotein kinase C(PKC)inhibitorであるchelerythrine投与モデルにおいても同様の検討を行い、early IP効果に対するeNOSおよびPKCの関与について検討した。 3.結果 (1)Western blot法により、IPによってAMI発症後3時間で虚血領域でのeNOS蛋白の発現が増加し、免疫組織染色により活性型eNOSおよびNOと結合したグアニル酸シクラーゼ(活性型グアニル酸シクラーゼ)の発現が虚血領域の血管内皮で増加していることが明らかになった。一方、inducible NOS(iNOS)蛋白の発現増加は認められなかった。(2)IPにより、虚血領域でのeNOS遺伝子の発現増加が認められた。(3)IPにより、AMI発症後6時間で虚血領域での血管拡張が認められ、虚血領域が縮小した。さらに、3日後には虚血領域と梗塞領域の縮小が認められた。(4)L-NAME投与によって、IP後に認められたeNOSの発現増加は抑制されなかったが、活性型グアニル酸シクラーゼの発現、血管拡張、および6時間後での虚血領域縮小効果は抑制された。しかし、3日後の虚血領域および梗塞領域縮小効果は抑制されなかった。一方、chelerythrine投与によっては、IPによるeNOSおよび活性型グアニル酸シクラーゼの発現、虚血領域での血管拡張効果は抑制されなかった。 以上の結果から、early IP効果には、虚血領域での血管内皮におけるeNOSの発現増加と活性化により惹起される血管拡張が関与していることが明らかになった。さらに、このearly IP効果には、iNOSやPKCが関与していないことが明らかになった。
|