2005 Fiscal Year Annual Research Report
肥満および糖尿病による中枢性呼吸機能障害に関する基礎的研究
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16790450
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
岡崎 真理 城西大学, 薬学部, 講師 (50272901)
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Keywords | ストレプトゾトシン糖尿病 / ラット / 呼吸中枢 / Real-Time RT-PCR法 / DNAアレイ / NMDA受容体 / EAAC1 / グルタミン酸神経系 |
Research Abstract |
過剰のエネルギー摂取により誘発される肥満および糖尿病は、現代人にとって最も身近な生活習慣病となっているが、両疾患とも時に呼吸中枢の機能低下による重症型の呼吸不全を引き起こす。しかし、これらの病態や発症メカニズム不明であり、またその病因に関して肥満・糖尿病におけるどの因子が直接関わっているのかほとんど解明されていない。昨年度までに免疫組織学的手法を用いた呼吸機能検査を行い、ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットでは、延髄呼吸中枢を構成する孤束核(延髄背側呼吸群)と疑核(延髄腹側呼吸群)において、低酸素負荷に応答するニューロン数が対照ラットに比べ減少することを明らかにした。このことから、糖尿病ラットでは低酸素負荷に対する応答が低下していることがニューロンレベルで確認された。また、これらの呼吸関連神経核の遺伝子発現解析を行ったところ、孤束核においてNMDA受容体およびサブスタンスP受容体のmRNA発現量が上昇していることが明らかになった。今年度は、糖尿病によって生じる遺伝子発現パターン変化について検索するため、マウスの全脳を用い、DNAアレイ法により解析を行った。その結果、糖尿病ラットでは、エストロゲン受容体、アセチルコリン受容体、インターロイキン等の遺伝子発現が増加していることがわかった。また、呼吸機能に深く関わっているグルタミン酸神経系の変化として、NMDA受容体の増加と、グルタミン酸のトランスポーターであるEAAC1遺伝子の発現低下が認められた。この変化は、Real-Time RT-PCRによる解析により、海馬や皮質、線条体、扁桃体など広範囲にわたることが確認された。グルタミン酸神経の伝達効率は、受容体とトランスポーターの相対比によって調節されると考えられることから、糖尿病ラットの脳では、グルタミン酸神経伝達に何らかの障害が起こっている可能性が示された。
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