2005 Fiscal Year Annual Research Report
TGF-βとMMP-12の動態解析による肺気腫の形成機序解明と増殖因子による再生
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16790453
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高橋 左枝子 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10327512)
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Keywords | HGF / エラスターゼ誘導肺気腫マウス / MMP-12 / TGF-β |
Research Abstract |
エラスターゼ誘導肺気腫マウスにおける肺胞洗浄液中のTGF-β蛋白量と肺組織中のMMP-12mRNA発現量の測定にて、同マウスでは経時的にTGF-βが低下しMMP-12は増加することがわかった。TGF-βとMMP-12の発現相反性は既に複数で報告されている。エラスターゼ誘導肺気腫マウスに対するHGFを投与にて、投与条件により肺気腫の改善も増悪も認めた。改善は急性期の炎症を過ぎた時期、エラスターゼの気管内投与後3週間後にHGFを皮下注射にて連日投与した場合であった。肺気腫病変の改善は定圧伸展して固定した摘出肺の肺胞径を解析ソフトを用いて測定した。改善の機序は血管内皮細胞と肺胞上皮細胞の増殖促進であることがPCNAによる免疫染色で確認された。すなわちHGF投与群ではPBS投与群に比較しPCNA陽性細胞の比率が高かった。 一方で肺気腫病変が悪化したのはエラスターゼ投与直後の急性期にHGFを気管内投与または皮下注射による投与をした場合であった。その機序は抗線維化薬の可能性が謳われているように、TGF-bの低下であることが肺胞洗浄液を用いてELISAで行った蛋白量の測定、肺組織を用いてPCRで行ったmRNA発現量の測定で確認された。すなわちHGF投与群では蛋白量・mRNA発現量ともPBS投与群に比較して低値であった。HGFによりTGF-bが低下し炎症による細胞外マトリックスの増加が抑制されることが肺気腫悪化の原因であると思われた。 今回の実験では慢性期にHGFを気管内投与すると肺気腫が改善するかどうかを調べておらず、喫煙によるひと肺気腫とエラスターゼ誘導肺気腫では肺気腫形成過程が異なる点もあるが、肺気腫患者において、禁煙後つまり急性炎症が治まったときにHGFを投与すると肺気腫病変が改善する可能性が示された。
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