2004 Fiscal Year Annual Research Report
脂肪細胞の増殖・分化における局所調節因子としてのアンジオテンシンIIの分子機構
Project/Area Number |
16790522
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
菅波 孝祥 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助手 (50343752)
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Keywords | レニン・アンジオテンシン系 / アンジオテンシノーゲン / 1型アンジオテンシン受容体 / 欠損マウス / メタボリックシンドローム / 脂肪組織 / 肥満 / 高脂肪食負荷 |
Research Abstract |
従来、レニン・アンジオテンシン系は、血圧や水電解質代謝調節に関与することが良く知られているが、レニン基質であるアンジオテンシノーゲンが脂肪組織において産生されること、肥満に伴って脂肪組織におけるアンジオテンシノーゲンの産生が増大することが明らかになり、肥満やメタボリックシンドロームにおけるアディポサイトカインとしてのアンジオテンシンII(AII)の病態生理的意義が注目されている。本研究では、AIIのエネルギー代謝調節作用の分子機構を明らかにするために、1型アンジオテンシン受容体欠損マウス(AT1a-KOマウス)を用いて、高脂肪食負荷における摂食量とエネルギー代謝の変化を検討した。AT1a-KOマウスでは、野生型マウスと比較して高脂肪食負荷により誘導される体重あるいは体脂肪量の増加が著しく抑制されていた。AT1a-KOマウスでは野生型マウスと比較して、尿中カテコラミン排泄量の増加に伴う直腸温、酸素消費量、褐色脂肪組織におけるUCP-1遺伝子発現の増加が認められ、交感神経活動亢進によるエネルギー代謝の亢進が示唆された。更に、AT1a-KOマウスより得られるマウス胎性線維芽細胞を用いた検討では、AIIの添加あるいは非添加にかかわらず同程度の中性脂肪蓄積が観察され、脂肪細胞分化に明らかな変化を認めなかった。一方、野生型マウスより得られた成熟脂肪細胞においてAIIはレプチンとアディポネクチン遺伝子発現には影響を与えなかったが、MCP-1やIL-6遺伝子発現を誘導し、これはAT1受容体拮抗薬によりほぼ完全に抑制された。以上より、AT1a-KOマウスでは高脂肪食負荷による肥満の発症が著しく抑制されることが明らかになり、肥満やメタボリックシンドロームの発症・進展におけるAT1の病態生理的意義が示唆された。
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