2004 Fiscal Year Annual Research Report
骨形成蛋白(BMP)による内分泌調節作用機序の解明とその臨床応用のための基礎研究
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16790525
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大塚 文男 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (40362967)
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Keywords | 内分泌腺 / 卵巣顆粒膜細胞 / 骨形成蛋白(BMP) / ステロイド合成 / ホルモン / 副腎皮質 / 甲状腺 / 細胞増殖因子 |
Research Abstract |
今回の研究では、まずヒト卵巣顆粒膜由来の細胞株としてヒトKGN細胞を用い、下垂体から分泌されるゴナドトロピンFSHと卵巣におけるBMPの機能連携について検討した。顆粒膜初代培養細胞と同様に、KGN細胞にもBMPシステムの作動環境としてBMPのI型・II型受容体およびシグナル伝達因子Smadが発現しており、FSHの存在下ではFSH受容体を介してステロイド合成能を発揮できる。興味深いことにcDNAアレイを用いた検討では、FSHの存在下でこの細胞のBMP受容体やシグナル伝達系Smadの発現が増強された。現在、BMP応答レポーター遺伝子活性をもとに、この細胞における種々のBMP受容体サブユニットの過剰発現の影響と、FSHによるBMPシステムの活性化作用について比較検討中である。さらに、卵母細胞に強い発現を認めるBMP-15を卵母細胞機能の診断ツールとして利用するため、BMPアッセイ系の設立への基礎研究も進行中である。またBMPを生体内投与した場合に考慮すべき作用として、BMPが卵巣ステロイド合成に作用することから、生体内の他のステロイド合成系への干渉作用の存在が想定される。性腺外のステロイド合成系として、副腎皮質ステロイド合成におけるBMPの影響についても評価した。その結果として、ヒト副腎皮質培養細胞H295Rに発現するBMP-6が、副腎皮質刺激因子のなかでもアンギオテンシンIIと協調して副腎皮質ステロイドであるアルドステロンの産生・分泌を促進することが明らかとなり、BMPは卵巣のみならず卵巣外のステロイド合成系にも影響することが証明された。また、他の主な内分泌腺として、甲状腺でのBMP作用について検討したところ、甲状腺刺激ホルモンTSH作用への抑制作用が明らかとなった。このようにBMPは、自己分泌・傍分泌機構により卵巣・副腎皮質・甲状腺における内分泌調整機構を発揮することが明らかとなってきた。
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