2005 Fiscal Year Annual Research Report
造血幹細胞の支持細胞「ニッチ細胞」としての骨芽細胞の機能解析
Project/Area Number |
16790542
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
新井 文用 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (90365403)
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Keywords | 造血幹細胞 / ニッチ / 骨芽細胞 / N-cadherin / Side-population / 活性酸素 |
Research Abstract |
本研究では、成体骨髄の骨芽細胞ニッチに存在する、静止期造血幹細胞(c-Kit+Sca-1+Lin-Tie2+のside-population細胞)に特異的に発現しているN-cadherinに注目し、造血幹細胞の制御における役割を検討した。まず、マウスの成熟過程におけるN-cadherinの発現を造血幹細胞と骨芽細胞で検討したところ、静止期造血幹細胞の増加する6週齢以降にN-cadherinの発現が造血幹細胞と骨芽細胞の双方で上昇することを見出した。この結果から造血幹細胞-ニッチの相互作用がN-cadherinによって形成されることを示すものと考えられた。また、N-cadherinを介した幹細胞とニッチの接着は幹細胞のコロニー形成能の維持、細胞分裂速度の低下に働くことがわかった。さらに、N-cadherinの骨髄再構築能における機能を検討するため、野生型N-cadherin (WT-N-cadherin)、優性阻害型N-cadherin (DN- N-cadherin)を造血幹細胞に導入し移植実験を行った。その結果、DN- N-cadherinを発現する造血幹細胞は骨髄再構築が著しく抑制された。また、WT-N-cadherinを強発現する造血幹細胞はSP分画に濃縮されることがわかった。これはN-cadherinにより造血幹細胞がニッチと強固に接着し、細胞周期の静止が誘導されたものと考えられた。以上の結果から、N-cadherinが造血幹細胞とニッチとの接着に働きHSC-骨芽細胞の接着を促進することで造血幹細胞をニッチに留め、さらに細胞分裂の抑制/細胞周期の静止に働き、未分化性を維持することが示唆された。 一方、抗がん剤による骨髄抑制を誘導すると、造血幹細胞内の活性酸素が上昇し、N-cadherinが切断されることがわかり、幹細胞のニッチからの離脱に際し、活性酸素による幹細胞とニッチの接着の阻害が関連することがわかった。
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