2004 Fiscal Year Annual Research Report
窒素含有ビスフォスフォネートの抗腫瘍効果とその分子作用機構
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16790543
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
井口 豊崇 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (50306685)
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Keywords | 窒素含有ビスフォスフォネート / 骨肉種 / アポトーシス / 細胞周期停止 |
Research Abstract |
窒素含有ビスフォスフォネートは破骨細胞を標的とした骨吸収抑制作用に加え、1990年代初めからMM患者に対する臨床試験の結果が報告されてきた。われわれは、窒素含有ビスフォスフォネートのMMに対する直接的な抗腫瘍効果と、その機序を解明し、Cellular Signalling 15:719-727、2003に報告した知見に基づき、窒素含有ビスフォスフォネートは生体内に投与すると骨局所に集積することから、MMと同様に骨原発腫瘍にも抗腫瘍効果があると考え、骨肉腫(OS)細胞に対する抗腫瘍効果に着目した。ヒト骨肉腫細胞(HOS,MG-63)に第3世代ビスフォスフォネートであるパミドロネート、ゾレドロネートを作用させ、MTTアッセイ、フローサイトメーターによるアポトーシス解析(AnnexinV/PI染色)、BrDUを用いた細胞周;期解析を行った。いつれも10〜100μMでアポトーシスを誘導することが確認でき、細胞周期解析により、S期停止を確認した。既存の抗がん剤の多くはG_1期またはG_2/M期で細胞周期を停止させるので、S期停止は非常に興味深い。Mevalonate cascadeを介した低分子G蛋白結合因子の関与が明らかとなり、ATM・Chk1が活性化される事が解明された。形態学的にも蛍光免疫染色により中心体の複数化によりS期停止が確認された。 窒素含有ビスフォスフォネートのOS細胞株に対する細胞増殖抑制効果と細胞周期に対する影響は実験により明らかとなり、そのアポトーシス誘導機序および細胞周期調節機構を分子遺伝学的に明し、概要を平成16年9月に第63回日本癌学会学術総会(福岡)で発表した。現在は追加実験を行い、論文投稿準備中である。平成17年度以降はOSに対する新しい分子標的療法の一つとなりうるという知見に基づき、OSモデルマウスを作成し、窒素含有ビスフォスフォネート製剤によるOS治療の可能性を検討し、最終的には、臨床応用を目標としている。
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