2004 Fiscal Year Annual Research Report
生薬成分トリプトライドによる多発性骨髄腫に対する新たな分子標的療法の開発
Project/Area Number |
16790545
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
仲里 朝周 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10296569)
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Keywords | 多発性骨髄腫 / 生理活性物質 / アポトーシス / Mcl-1 / 低侵襲治療 |
Research Abstract |
多発性骨髄腫は大量化学療法や造血幹細胞移植によっても治癒が難しい予後不良の疾患である。高齢者に多いため治療成績を向上させるためには新たな概念に基づく治療法の開発が急務である。そこで、生体侵襲の少ない新たな骨髄腫の分子標的療法の開発を目的に生薬成分diterpene誘導体トリプトライドの骨髄腫細胞に対する効果について検討した。トリプトライドは極めて低濃度(0〜50nM)かつ短時間(0〜12h)に、種々の骨髄腫細胞株(HS-sultan,IM9,U266,RPMI8226)および骨髄腫患者細胞のアポトーシスを誘導し細胞増殖を抑制した。トリプトライド処理によりRPMI8226細胞はカスパーゼ3の活性化、ミトコンドリア膜電位の低下、細胞質へのSmac/DIABLOの遊離によりアポトーシスが誘導された。解析した種々のアポトーシス関連分子の中では、骨髄腫細胞の生存に重要とされるMcl-1の発現がトリプトライド処理にて蛋白およびmRNAレベルで減少した。現在、Mcl-1過剰発現骨髄腫細胞を作製しトリプトライドの分子作用機構について検討している。さらに興味深いことに、トリプトライドはRNAポリメラーゼIIのリン酸化を抑制し、転写伸長反応を阻害することによりMcl-1をmRNAレベルで抑制し、アポトーシスを誘導することが明らかとなった。また、NOD/SCIDマウスにRPMI8226細胞を移入した骨髄腫モデルマウスを作製し、トリプトライドのin vivoにおける効果を現在検討中である。以上の結果より、生薬成分トリプトライドは生理活性物質であり、Mcl-1を標的とした生体侵襲の少ない新たな多発性骨髄腫の分子標的治療薬となり得る可能性が示された。
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