Research Abstract |
B型肝炎(HBV)母子感染防止措置を早期に開始する「国際方式」で予防措置を行い,1歳前後まで経過観察し得た10例について,血清中のB型肝炎ウイルス(HBV)のDNA検出を試み,その予防効果を検討した. 【方法】 対象は10例(男児5例,女児5例)で,うち4例は母親がHBe抗原陽性,6例がHBe抗体陽性だった.国際方式の予防措置プロトコールは,原則として出生時にHBIG 1回接種し,その後日齢5・1ヶ月・3ヶ月にHBワクチン接種を行った.規定のワクチン接種をした症例が7例,追加ワクチンを要した症例が3例(27%)あった.追加接種の時期は生後4ヶ月,37ヶ月,38ヶ月であった. HBワクチン接種期間中,HBワクチン終了後1ヶ月,1歳前後のポイントで,HBs抗原,HBs抗体を測定した.HBs抗体については2001年1月から測定法がRIA法からCLIA法に変わったため,換算式(CLIA法(mU/ml)=6.2×RIA法(COI)-13.2)を用いてRIA法での値にして比較検討した.またワクチン終了時と1歳前後でHBV-DNAをリアルタイムPCR法で測定した.HBV-DNAリアルタイムPCR法の感度は2.0×10^2copies/mlであった. 【結果】 全例でHBV母子感染を防止できた.HBs抗体価は,ワクチン3回終了時で中央値36.5COIであり,13COIと低値だった症例において4ヶ月時に追加ワクチンを接種した.また1歳前後では中央値37.5COIであり,いずれも母子感染予防には十分な値と考えられた. HBV-DNAの検討では,7例がワクチン終了時,1歳前後の2ポイントでHBV-DNAは感度以下であった.ワクチン終了時のみ測定できた1例と,1歳前後のみ測定できた2例は,各々HBV-DNAが感度以下であった.この期間中にHBV-DNAを測定できなかった1例は2歳時に測定でき,2.1×10^2/mlと弱陽性であった.この症例はHBs抗体価についてもHBワクチンへの反応は良好で,HBs抗原陽性化やHBc抗体再上昇は認めなかった.一方追加ワクチンを行った3例については,測定できたポイントではいずれもHBV-DNAは感度以下であった. 【今後の課題】 今後症例を加え,HBワクチン接種中のHBV-DNA検出を試み,ワクチン反応良好例とワクチン追加例でHBV-DNAの有無について検討していく予定である.
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