2004 Fiscal Year Annual Research Report
テトラヒドロビオプテリン羊水内注入による胎盤血流改善療法の開発
Project/Area Number |
16790612
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山枡 誠一 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (40315990)
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Keywords | テトラヒドロビオプテリン / 胎盤機能不全 / 葉酸 / 一酸化窒素 / 子宮内胎児発育遅 / ビオプテリン |
Research Abstract |
テトラヒドロビオプテリン(BH_4)は、一酸化窒素合成に不可欠な物質であり、胎児胎盤循環においても重要な物質であると考えられている。胎児発育におけるBH_4の意義を知るために、妊娠ラットにBH_4合成阻害剤である2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジンを妊娠16日目より連続投与し、非投与群と胎児・胎盤重量を比較した。その結果、投与群の胎児体重および胎盤重量は非投与群のそれらに比して有意に低かった。このことから、BH_4が胎児および胎盤組織の発育に重要な作用を有していることが判明した。今後、このBH_4欠乏下子宮内胎児発育遅延モデルを用いて、BH_4補充経路として羊水内注入が有効であるかどうかを検討する。 一方、ヒトの胎盤におけるBH_4合成酵素活性の研究から、胎児胎盤系におけるBH_4産生経路としてデヒドロ葉酸還元酵素を介する経路が最も重要であることが判明した。この酵素はBH_4のみならず、活性型葉酸の維持にも不可欠な酵素である。すなわち、BH_4レベルの維持が葉酸を維持する経路と同一の酵素で形成されていることを示す。従って、胎児におけるBH_4を用いた治療法確立のためには、BH_4代謝と葉酸代謝の相関を検討することが不可欠であると考えられた。そこで、臍帯血中のビオプテリンと葉酸の濃度を測定し、両者の相関を解析した。その結果、両者の間には有意な相関は認められなかった。このことは、正常発育ヒト胎児においてはBH_4と葉酸を維持するシステムが共有されているが、共有酵素であるデヒドロ葉酸還元酵素活性が両者のレベルに影響を与えないほどに十分に存在することによると考えられる。しかしながら、実際に治療対象となる胎盤機能不全状態の胎児・胎盤での検討は不十分であり、今後さらに解析する必要があると考えられた。
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