2005 Fiscal Year Annual Research Report
超高磁場3TMRIを用いた初発統合失調症の拡散テンソル解析
Project/Area Number |
16790677
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
北村 秀明 新潟大学, 医歯学系, 助手 (00361923)
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Keywords | 脳神経疾患 / 神経科学 / 統合失調症 / 磁気共鳴画像 / テンソル / グルタミン酸 / 認知障害 |
Research Abstract |
予備的報告として昨年度に発表した,慢性期の統合失調症における前頭葉白質のfractional anisotropy(FA)の低下を再確認する目的で,初発患者を含むより罹病期間の短い別の患者群で,拡散テンソル解析を施行した.結果は,健常群と比較して,やはり患者群の前頭葉白質FA値は有意に低かった. 同時に行った磁気共鳴スペクトルスコピー(MRS)では,統合失調症の前部帯状回のグルタミン・グルタミン酸濃度(Glx)が,健常群と比較して有意に低かった. またWechsler Adult Intelligent Scale-Revised(WAIS-R)を用いて知能のレベルとプロフィールを,Wechsler Memory Scale-Revised(WMS-R)を用いて記憶の機能レベルとプロフィールを定量した.統合失調症患者の全検査IQは,平均下から境界程度であり,動作性IQは言語性IQより平均で10程度低かった.またWMS-Rでは,全般的に記憶成績は悪かったが,言語性記憶指数と遅延再生指数が特に不良であった.そしてPIQ,言語性記憶指数,遅延再生指数が低いと,FAとGlxも低い傾向を認めた. 高解像度3次元MRI(スライス厚1.8mn×170枚の連続冠状断画像)を取得し,全脳を対象としたボクセル単位の脳体積の解析,すなわちvoxel-based morphometry(VBA)を試みたが,有意な群間差を認めなかった. 今回の結果からは,有意な構造的異常がない程度の統合失調症患者においても,FAやGlxといった微細構造的・機能的指標で評価すれば,明瞭な異常が存在することが示唆された.またFAやGlxは知能や記憶のある局面と有意な相関関係を有することが判明した.つまり興奮性の神経伝達物質であるグルタミン酸濃度の低下は,軸索回路網の粗雑化と関係し,認知障害や陰性症状の分子基盤である可能性がある.
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