Research Abstract |
慢性期の統合失調症患者で見出された脳白質異常が,初発患者においても存在するか否か確かめるために,初発患者7名,慢性患者7名,対照正常者14名に対して,関心領域(前頭連合野白質,頭頂連合野白質,前部帯状束,後部帯状束,脳梁膝部,脳梁膨大部,内包)における拡散テンソル画像法を施行した. 結果は,正常者と比較して統合失調症(初発患者+慢性患者)の拡散異方性指標fractional anisotropy(FA)は,前頭連合野白質と前部帯状束で有意に低く,頭頂連合野白質と後部帯状束で低い傾向があった.脳梁膝部,脳梁膨大部,内包のFA値については,正常者と違いはなかった.初発患者と慢性患者を直接比較すると,前頭連合野白質と前部帯状束のFA値は同程度であったが,頭頂連合野白質と後部帯状束のFA値は,慢性患者でより低い傾向があった.同時測定された磁気共鳴スペクトロスコピーでは,慢性患者,初発患者,正常者の順で内側前頭皮質のグルタミン酸・グルタミン信号が低かった.また改訂クェクスラー記憶検査を用いた記憶検査成績も,慢性患者,初発患者,正常者の順で不良であった. 以上まとめると,初発の統合失調症患者においても,脳白質異常は前頭葉白質を中心に存在するが,グルタミン酸・グルタミン代謝が低下して,認知障害が進行していく慢性化の過程で,白質異常は脳のより後方部にまで拡大すると推測された.拡散テンソル画像で同定された統合失調症の脳白質異常には,発症前から存在しているかもしれない神経発達上の問題と,発症後の後天的神経障害の両方が関与している可能性が示唆された.
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