Research Abstract |
注意欠陥多動性障害は,多動性,不注意,衝動性といった行動上の特性によって定義づけられる症候群であるが,治療反応性や予後は画一的ではなく,様々な異なる病態が混在しているものと推察されている。本研究では,薬剤による治療反応性と,チェックリストを用いた行動の客観的評価に加え,携帯式行動量測定装置を用いた行動量の測定,さらに近赤外線分光法装置を用いた前頭前野の実行機能課題遂行時の脳血行動態の測定,事象関連電位P300といった精神生理学的指標により,治療反応性の予測を検討する。 本研究の初年度に当たる平成16年度においては,注意欠陥多動性障害の児童を対象とした研究実施に先立ち,健常ボランティアを対象に,これらの客観的な精神生理学的指標の測定を反復し,手技の洗練を得ること,ならびに,年少の注意欠陥多動性障害の子どもに負担とならずに実施可能で,かつ,再現性を求めやすい課題の設定について繰り返し検討した。さらに,児童外来を受診する注意欠陥多動性障害の児童を対象に症状評価を行い,評価間一致度を検討した。また,注意欠陥多動性障害の薬物療法の実施方法については,確立したアルゴリズムが存在しないことから,従来,提案されている治療ガイドラインと,これまでに提出されてきたエビデンスを統合し,独自のガイドラインの策定を行った。これらを経て,注意欠陥多動性障害の児童における本研究の遂行に必要な研究プロトコールが確立し,現在,最終的な倫理的側面の検討を行い,本学の倫理委員会に諮る段階にまで至った。
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