Research Abstract |
注意欠陥/多動性障害は,多動性-衝動性,不注意に特徴付けられる発達障害であり,先行研究から持続遂行検査や事象関連電位(P300)の潜時,振幅によって評価しうることが明らかにされてきた。一方,広汎性発達障害は,対人関係障害,コミュニケーション障害,反復的で常同的な関心と活動の幅によって特徴付けられるが,しばしば多動性-衝動性,不注意を合併することが知られている。しかし,現行の診断基準では,広汎性発達障害の診断を優先し,注意欠陥/多動性障害を重複診断しないことになっている。我々は,この妥当性を検証するため,多動性-衝動性,不注意を有する発達障害の患者に対して,事象関連電位などの客観的指標を用いて測定し,また治療反応性を評価してきた。その結果,広汎性発達障害のある患者においても,注意欠陥/多動性障害と同様の所見と治療反応性を認めた。このことから,広汎性発達障害においても注意欠陥/多動性障害は併存疾患としてみなしうるものであり,すべての広汎性発達障害の症例において注意欠陥/多動性障害の有無,ならびに多動性-衝動性,不注意の重症度を把握することの重要性が明らかになり,現行の診断基準のあり方に疑問を投げかけるものであった。
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