2005 Fiscal Year Annual Research Report
痴呆性疾患モデルマウスにおけるタウ免疫療法の可能性の検討
Project/Area Number |
16790688
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
石原 武士 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (60335594)
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Keywords | タウ蛋白 / 神経変性疾患 / タウオパシー / 動物モデル / 免疫療法 |
Research Abstract |
当研究の目的は、アルツハイマー病を始めとするタウ蛋白関連疾患(タウオパシー)に対するタウ免疫療法の可能性を検討することである。 計画に従い、タウ蛋白でタウオパシーのモデルマウスを免疫することにより(生後3ヶ月のマウスに2週間ごとに4回の精製タウ蛋白の播種)、タウ蛋白に対する抗体価の上昇を確認した上で、病理学的、生化学的、行動学的検討を行なった。その結果、正常マウス、モデルマウスともにタウ蛋白に対する抗体価は上昇したが、正常マウスでは血漿を5000倍希釈しても強い反応性を示したのに対し、モデルマウスでは個体差が大きく、多くは200倍程度に留まった。組織学的実験では、免疫を受けたマウスにおいてタウ病変に明らかな変化は認められず、生化学的にも、タウ蛋白の溶解性、リン酸化状態に明らかな変化は認められなかった。抗体価の上昇が強かったマウスの一部で、タウ病変の減弱を示唆する所見があり精査したが、通常観察される個体差の範囲内であると結論した。従って、タウ蛋白による免疫によって抗体価の上昇は認めたものの、タウ病変に対して予防的または治療的な作用を発揮し得る可能性は低い。 アルツハイマー病に対する免疫療法としては、アミロイド病変に対する取り組みが先行しており、動物実験では劇的な効果が報告され、ヒトでの治験でも一定の効果が報告されている。アミロイド病変とタウ病変の違いの一つは、前者は細胞外病変、後者は細胞内病変という点である。細胞内病変であるタウ病変に対する免疫療法に関しては否定的な予想が多いが、細胞が死滅した後は"細胞外病変"'として残るタウ病変への効果や、その結果としてのタウ蛋白クリアランスへの影響などは検討対象となるはずである。残念ながら、少なくとも当研究で用いた実験デザイン(マウス種も含む)ではタウオパシーに対する免疫療法の効果は否定的であったが、今後、異なるデザインによる追試に期待したい。
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