2004 Fiscal Year Annual Research Report
外傷後侵入性想起の病態解明を目指した基礎的研究:情動記憶と扁桃体体積の検討
Project/Area Number |
16790711
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
松岡 豊 国立精神・神経センター, 成人精神保健部, 室長 (30370985)
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Keywords | PTSD / 侵入性想起 / 情動記憶 / 長期記憶 / アドレナリン / 心拍数 / 扁桃体 |
Research Abstract |
本研究は、PTSDに特徴的な症候である侵入性想起(外傷体験に関連した刺激によって誘発され、本人が望んでいないにも関わらず突然甦り、繰り返し侵入的に想起される異常に強力で情動的な記憶)の病態を、情動の中枢である扁桃体の形態、機能両面から検討し、症状の発現起序を明らかにするための基礎的実験研究である。検証する仮説は「侵入性想起をもつ群は持たない群に比して、扁桃体は小さいにもかかわらず、情動記憶の保持が強い」である。 当該年度前半においては、本実験に向けての予備実験を行い、後半に本実験を開始した。本研究は施設の倫理審査委員会が承認した後、本人から文書同意を得て行われた。予備実験の対象者は、PTSDの生涯診断のつくPTSD群女性6名(49±8才)と年齢と居住地をマッチさせた健常女性6名(51±7才)であった。刺激課題は、第2章が情動喚起物語となる全3章から構成されている(Cahill et al.,1995)。実験初日、刺激課題をモニター呈示し、安静時から課題呈示終了後まで心拍数を連続的に記録した。そして1週間後、刺激課題の内容に関して不意の記憶検査を行った。 その結果、予期状態(刺激呈示前20秒間)における心拍数に示されるアドレナリン作動系の活動性と、1週間後の情動性記憶の保持量に正の相関関係がみられ、さらにその関連性は、PTSD群においてのみ示された。これは、アドレナリン作動系の過活性が情動を伴う出来事記憶の長期記憶の増強に関与するという見解(Cahill et al.,1994)を支持し、その関連性がPTSD群においてのみ示されたことは、記憶増強の過程におけるアドレナリン作動系の関与がより強固なものとして残ることが示唆された。 以上より、実験の妥当性に問題ないことが確認できたため、本実験を開始するとともに、扁桃体体積の測定も開始した。なお、現時点で20名の調査を終えた。
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