2005 Fiscal Year Annual Research Report
外傷後侵入性想起の病態解明を目指した基礎的研究:情動記憶と扁桃体体積の検討
Project/Area Number |
16790711
|
Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
松岡 豊 国立精神・神経センター, 成人精神保健部, 室長 (30370985)
|
Keywords | PTSD / 侵入性想起 / 情動記憶 / 偏桃体 / 長期記憶 / 心拍数 |
Research Abstract |
本研究は、PTSDに特徴的な症候である侵入性想起(外傷体験に関連した刺激によって誘発され、本人が望んでいないにも関わらず突然甦り、繰り返し侵入的に想起される異常に強力で情動的な記憶)の病態を、情動の中枢である扁桃体の形態、機能両面から検討し、症状の発現起序を明らかにするための基礎的実験研究である。検証する仮説は「侵入性想起をもつ群は持たない群に比して、扁桃体は小さいにもかかわらず、情動記憶の保持が強い」である。 当該年度は、昨年度に引き続き本実験を行い、計51名の調査を終了した。本研究は施設の倫理審査委員会が承認した後、本人から文書同意を得て行われた。対象者は、がん生存者で侵入性想起の過去診断のつく群11名(IR+:51.8±4.0歳)、侵入性想起の診断がつかない群20名(IR-:51.9±7.8歳)と年齢と居住地をマッチさせた健常女性20名(control:52.1±6.4歳)が参加した。刺激課題は、第2章が情動喚起物語となる全3章から構成されている(Cahill et al., 1995)。実験初日、刺激課題をモニター呈示し、安静時から課題呈示終了後まで心拍数を連続的に記録した。そして1週間後、刺激課題の内容に関して不意の記憶検査を行った。 仮説は記憶増加量Δ(2章-1章)がIR+>IR-=controlであったが、結果はIR+=control>IR-で仮説を支持しなかった。IR+群とcontrol群は2章(情動を喚起する章)が1章(中立章)に比して有意に記憶保持量が多かったが、IR-群においては、1章と2章に記憶量の有意な差がなかった。 以上から、過去に侵入性想起を有していたか否かによって、情動的刺激に関する記憶形成に相違がみられることが示唆され、そのメカニズムとして、抑制系機能の働きの相違が推測された。
|
Research Products
(3 results)