2006 Fiscal Year Annual Research Report
外傷後侵入性想起の病態解明を目指した基礎的研究:情動記憶と扁桃体体積の検討
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16790711
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
松岡 豊 国立精神・神経センター, 精神保健研究所成人精神保健部, 室長 (30370985)
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Keywords | PTSD / 侵入性想起 / 情動記憶 / 海馬 / 扁桃体 / 長期記憶 |
Research Abstract |
申請者らは、これまでに侵入性想起(望んでいないにも関わらず突然甦り、繰り返し侵入的に想起される異常に強力で情動的な記憶)を有する乳がん生存者は、それを有さないものに比して、海馬と扁桃体が小さいことを報告した(Nakano et al.,2002;Matsuoka et al.,2003)。しかし、海馬と扁桃体の体積の小ささと侵入性想起の間に観察された関連が、数年にわたり持続した侵入性想起による神経毒性の結果なのか、それとも元から小さな海馬と扁桃体を有する女性が不快ながん体験の後侵入性想起を発現したのかという因果関係が分からなかった。ただ、Gilbertson et al.(2002)が、一卵性双生児を用いた研究で戦闘体験を経験していない健常な双子の一方の海馬体積が、戦闘体験を経験しPTSDを発症した双子のもう一方のPTSD重症度と正の関連があることを報告した。 そこで、本研究では、海馬と扁桃体体積を事前に計測した健常女性27名を対象とし、彼女たちに11枚の写真とナレーションから構成される情動刺激スクリプト(Cahill and McGaugh,1995)を提示した。そして1週間後に被験者にとっては想定外の内容に関する記憶テストを行い、脳体積と情動性記憶との関連を検討した。その結果、左海馬体積は、年齢、教育暦、頭蓋内容積、認知機能、遅延再生記憶機能、神経症的性格で補正後も1週間後の情動性記憶を有意に予測していた(r=-0.407,p=0.035)。この所見は、負の刺激を与えられたとき、強い情動反応を示す女性は、元から小さな左海馬体積を有する可能性を示唆するものである。従って、侵入性想起を有した乳がん生存者で認められた小さな海馬は、持続的な症状の毒性というより、がん体験以前から有していた脆弱性を示す因子である可能性が支持された。また本研究は、Gilbertsonらの観察研究を実験的に傍証したという意義もあった。
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Research Products
(5 results)