2005 Fiscal Year Annual Research Report
肺がんに対する新たな治療法、光線力学的遺伝子治療の開発
Project/Area Number |
16790802
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
臼田 実男 東京医科大学, 医学部, 助手 (60338803)
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Keywords | 光線力学的治療(PDT) / 遺伝子治療 / 光感受性物質 / 化学発光 |
Research Abstract |
光線力学的治療(Photodynamic therapy : PDT)は、低侵襲、臓器温存、QOLを考慮した治療法で、中心型早期肺癌に対して良好な成績をおさめてきた。しかし、レーザー照射可能領域でないと治療できなどの欠点があった。我々は、PDTに使用する腫瘍親和性光感受性物質と細胞内での化学発光により光線力学的反応を誘導し、それが抗腫瘍効果を有していることを本研究で明らかにした。すなわち、光線力学的治療に使用する光感受性物質の腫瘍親和性と化学発光酵素を遺伝子導入するという光線力学的遺伝子治療法(Photodynamic gene therapy)の有効性を証明した。化学発光反応としてrenilla luciferaseとcoelenterazineを利用し、それによって生ずる約418-450nmの青色光で腫瘍親和性光感受性物質レザフィリンを励起し、光線力学的反応を誘導し、抗腫瘍効果を有していることが明らかになった。肺癌細胞株A549、乳癌細胞株MCF-7c3 (caspase-3導入)細胞内に化学発光酵素renilla luciferaseのプラスミド遺伝子を高発現させ、その12時間後、細胞培養液中に酵素基質であるcoelenterazineとレザフィリン10□g/mlを加えた。Renilla luciferaseの遺伝子導入に際して、GFP (green fluorescent protein)ベクター、GFP-Bcl-2をそれぞれco-transfectionを施行した。遺伝子導入後、24時間後、36時間後に蛍光顕微鏡により肉眼的に典型的なアポトーシスをヘキスト染色により観察した。その結果、A549細胞、MCF-7c3細胞ともに遺伝子導入後36時間では20%を超える細胞がアポトーシスを呈していた。また、この細胞内PDTで誘導されるアポトーシスは、GFP-Bcl-2をco-transfectionにより抑制されることが明らかになった。光線力学的遺伝子治療は、十分な抗腫瘍効果を有し、進行肺癌だけではなく、体表から深部に存在するレーザー照射不可能な固形癌への応用なども可能である。また、この研究成果は、高齢者などへのQOLを考慮した新規のがん治療法として今後臨床応用が期待される。
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