2005 Fiscal Year Annual Research Report
循環器治療QOL向上のための循環器制御構造に関する臨床解剖学的基盤
Project/Area Number |
16790804
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
川島 友和 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (00328402)
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Keywords | 臨床解剖 / 肉眼解剖 / 心臓 / 自律神経系 / 刺激伝導系 / 循環器 |
Research Abstract |
本年度は、主に心臓の外来性制御構造である心臓自律神経系に関する解析を行った。まず、ヒト心臓自律神経系に関して、その起始から末梢分布にわたる全経過を手術用実体顕微鏡を使用して詳細な形態学的ならびに臨床解剖学的解析を行った。従来の著者間における相違に関する解剖学的補足に留まることなく、胸心臓神経に関しての新知見を得た。これまでは、右胸心臓神経が後縦隔の交感神経幹から起始し、中縦隔にある心臓に到達するために、横走もしくは上行して心臓へ辿り着くように記載されてきた。しかし、このような例は1例も観察されず、心臓神経は原則的に血管系に伴行してゆくために、肋間動静脈に沿って下行し、(1)奇静脈弓→上大静脈→心臓、もしくは(2)胸部大動脈→(反回、上行)→心臓という経路であった。 また、しばしば観察される鰓弓動脈の変異である後食道右鎖骨下動脈の際の心臓自律神経系の空間的変化に関しての比較研究も行った。その結果、後食道右鎖骨下動脈の際には、心臓自律神経分布が通常例と大きく異なっていた。これまでの報告では心臓自律神経が下方へシフトすることが示唆されていたが、そうではなく、従来の神経配置に加え、新たに別経路からの心臓神経/枝が加わっていた。これら2つの解析は、Anatomy and Embryology誌に掲載された。 さらに心臓自律神経系の本態を明らかにするために、アジアに生息する旧世界ザルであるマカクザル数種を用いて、進化的側面から比較形態学的研究も行い、いくつかの興味深い所見が得られた。また、解析した例の中には、本報告が初めての記載になる種も含まれていた。 一方、昨年度解析を行った内在性制御構造である心臓刺激伝導系に関する臨床解剖学的解析の論文も今年度に出版された。
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