2005 Fiscal Year Annual Research Report
くも膜下出血後の脳血管攣縮における血管平滑筋細胞の脱分化と血管攣縮機構の解析
Project/Area Number |
16790827
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
吉田 研二 岩手医科大学, 医学部, 助手 (10316367)
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Keywords | くも膜下出血 / 脳血管痙攣 / 平滑筋 / 脱分化 / 過還流 / 内径動脈狭窄症 / 血栓内膜剥離術 / free radical |
Research Abstract |
くも膜下出血患者の機能予後を左右する最も重要な因子には、脳血管痙攣とこれにより引き起こされる遅発性の脳梗塞が上げられるが、未だ発生機序は解明されておらず、決定的治療法が存在しない。約2週間も収縮をし続ける病的な血管運動は、血管平滑筋細胞の適切な分化状態からの逸脱が予想された。今回我々は、くも膜下出血後に起こる脳血管攣縮の発生機構には、血管平滑筋細胞の脱分化が重要に関連していると考え解析を行った。 大槽穿刺・自家血注入による雑種成犬くも膜下出血モデルにて脳血管攣縮を惹起させた。脳血管撮影を行い、脳血管攣縮を確認後に攣縮血管を摘出し解析を行った。 攣縮血管の中膜平滑筋細胞において、分化型血管平滑筋マーカー蛋白の発現は有意に減少していた。よって、くも膜下出血後に起こる脳血管攣縮は中膜平滑筋細胞の脱分化が関連していると推察できた。 上記病態における分化型血管平滑筋マーカー蛋白の転写機構についても解析を行った。分化型血管平滑筋細胞特異的蛋白質の転写因子中、分化維持に重要な働きをしていると考えられているMyocardinの発現は抑制されていた。くも膜下出血後に中膜平滑筋細胞の脱分化が関連する脳血管攣縮は、分化特異的転写因子のdown regulationに起因すると考えられ、これら転写活性の補充が病態治療に寄与する可能性が示唆された。 脳血管の運動性の変化は自動調節能の破綻、いわゆるauto regulationの障害をきたし、脳血流量の減少あるいは過灌流をきたすが、臨床的に過灌流を起こす病態について検討を行った。血栓内膜剥離術を行った内頚動脈狭窄症患者のうち過灌流現症、あるいは過灌流症候群の発生をSPECTを用いて検討を行った。これらの過灌流と術後合併症の一つである認知障害との関係について検討を行った。術直後の過灌流の存在は認知障害発生の独立した危険因子であることが明らかとなり、また発生した認知障害は後遺障害として遷延する可能性が示唆された。また、過還流の発生には、free radicalが深く関係していることが確認できた
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Research Products
(3 results)