2004 Fiscal Year Annual Research Report
冷却リンゲル液の動脈内灌流による脳低温導入法の開発
Project/Area Number |
16790838
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
古瀬 元雅 大阪医科大学, 医学部, 助手 (70340560)
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Keywords | 脳低温療法 / 選択的脳冷却 / 血管内冷却 / リンゲル液 |
Research Abstract |
冷却リンゲル液を動脈内より灌流し、脳低温、さらに選択的脳冷却導入法としての可能性を検討した。 ハイブリッド犬を用いた。4Fr.血管撮影用カテーテルを右大腿動脈から挿入し、右総頚動脈に留置した。このカテーテルより冷却リンゲル液を30分間灌流した。灌流量を1.5ml/kg/min(1.5群:n=6)、3.0ml/kg/min(3.0群:n=6)、5.0ml/kg/min(5.0群:n=3)の3群に分けた。6Fr.血管撮影用カテーテルを右大腿静脈から挿入し、右頸静脈に留置した。左大腿静脈より中心静脈にカテーテルを留置し、この2本のカテーテルを除水回路につないだ。希釈された頚静脈血を脱血、除水したのち中心静脈に返血した。除水量はリンゲル液投与量と同等量を目標とした。 5.0群では、2匹が死亡したため実験を中止した。1.5群では、右大脳、左大脳、直腸の冷却率は、1.8+/-0.9℃、1.4+/-0.5℃、1.5+/-0.7℃であり、右大脳と左大脳の冷却率の間に有意差を認めた。3.0群では、右大脳、左大脳、直腸の冷却率は4.7+/-1.0℃、3.5+/-0.5℃、3.4+/-0.8℃であり、右大脳は他の部位に比べ有意に早く冷却された。 1.5群では、血圧、心拍数に有意な変化を認めなかったが、心拍出量が灌流中に有意に増加した(p<0.05)。3.0群では、血圧、心拍数、心拍出量のすべてにおいて灌流後有意な変化を認めた。血液データでは、両群とも灌流後に有意な血液希釈を認めた。1.5群ではその他のデータに変動はなかったが、3.0群ではK、pH、Clが有意に変化した。 頚動脈に3.0ml/kg/minの速度でリンゲル液を灌流することで、右大脳に対する、急速選択的冷却を導入することができた。流量1.5ml/kg/minに低下させるとその選択性はほぼ消失した。一方、流量を5.0ml/kg/mimに増加させると、3匹中2匹が死亡し、リンゲル液のoverloadが原因と考えられた。実際、血圧、心拍数、心拍出量への影響は、流量が低下するほど減少している。除水能力の改善により、心肺停止を要しない、カテーテルのみを用いた低侵襲な方法で選択的脳冷却が安全に導入できると考えられる。
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