2004 Fiscal Year Annual Research Report
海馬スライス標本における低酸素脳障害に対する全身麻酔薬及び低体温の保護効果
Project/Area Number |
16790870
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Research Institution | Toyama Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
佐々木 利佳 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (10345572)
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Keywords | 低酸素負荷 / チオペンタール / イソフルラン / 海馬 / spreading depression |
Research Abstract |
[目的] 脳組織は無酸素に曝露されると,一過性に広範囲におよぶ興奮・脱分極を起こすことが報告されている.これをspreading depression (SD)と呼び,SDと低酸素による脳・神経障害には深い関係が示唆されている.一方,我々の以前の研究では,バルビツレートが低酸素負荷により引き起こされる海馬CA1細胞の一過性過剰興奮を抑制し,低酸素障害を軽減することを明らかにした.この結果をもとにして,本年度はラット海馬スライスCA1の集合電位(PS)における無酸素負荷によるSDの発生について,チオペンタールとイソフルランを用いて検討した. [方法] Wistar系雄性ラットから海馬スライス標本(0.4mm)を作成した.Schaffer側枝に電気刺激(0.1Hz)を与え,細胞外電極法によりCA1のPSを記録した(37℃).標本への灌流ガスを95%O2/5%CO2から0%O2/95%N2/5%CO2に切り替えることにより,180秒間の無酸素を負荷した.無酸素負荷前より,灌流液中にチオペンタール(5x10-4M)を投与した群(T群),イソフルラン(0.7 vol%)を投与した群(I群)と無処置群(N群)の3群に分けて比較検討した. [結果と考察] 1.N群:75%のスライスにおいてSDが発生し,回復率は79%であった.2.T群&I群:I群では63%のスライスにSDが発生し,回復率は43%であった.一方,T群はSD発生率を11%と有意に抑制し,回復率は82%であった.チオペンタールは無酸素負荷によるSD発生を有意に抑制した.一方イソフルランは,SD発生を防止できず回復率は有意に低かった.この結果はチオペンタールによる抑制性ニューロン促進作用と関係があると推察され,今回の検討においても,バルビツレートは低酸素障害を軽減する可能性が示唆された.
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Research Products
(2 results)