2004 Fiscal Year Annual Research Report
周術期の腎保護を目指した鎮静、鎮痛薬の腎機能保護作用の解析
Project/Area Number |
16790906
|
Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
村上 昌宏 産業医科大学, 大学病院, 助手 (60373156)
|
Keywords | 腎機能 / メサンギウム細胞 / ラット / 腎血流 / ケタミン / プロポフォール / ペントバルビタール / トラマドール |
Research Abstract |
現在我が国では、糖尿病などの慢性疾患により腎機能の低下している患者が増加し、それらの患者の手術件数は増加の一途をたどっている。周術期とくに術後においては腎機能が低下している患者の残存する腎機能をいかにして保護するかが重大な問題となる。腎機能障害を持つ患者の麻酔や術後の人工呼吸下の鎮静、疼痛管理に使用する鎮静薬、鎮痛薬は長期使用を考えてできるだけ腎機能を保護する薬物の使用が望ましい。 現在まで腎機能に関してはそのモニターの難しさから、その疑問に答えた報告はない。最近の病理学的、免疫学的研究により、腎機能の低下する過程で糸球体の構成要素であるメサンギウム細胞の増殖および基質の増加が認められることがin vitro, in vivoの実験で証明されており、メサンギウム細胞の障害と腎機能の関係が注目されている。メサンギウム細胞は腎機能に大きな影響を及ぼすため、これらの病理学的変化に鎮痛薬、鎮静薬がどのように影響するかを検討することは興味深い。本年度、申請者は鎮静薬、鎮痛薬がどのように腎機能へ影響があるのかを検討するために、ラットの腎血流に鎮静薬、鎮痛薬がどのように影響するかを、腎臓表面にレーザードップラー血流計を装着して、鎮静薬(ケタミン、プロポフォール、ペントバルビタール)と鎮痛で使用されてきているトラマドールの腎血流に与える影響を観察した。その結果、ケタミン、プロポフォール、ペントバルビタールは腎血流を保持することを確認した。 今後はノルエピネフリンの腎血流低下に対して、これらの鎮静薬、鎮痛薬が拮抗するのか検討し、さらに抗胸腺抗体をラットに静脈内投与してメサンギウム増殖性腎炎ラットを作り、腎血流に鎮静薬、鎮痛薬がどのように影響するかをレーザードップラー血流計で観察する。以上の検討から、翌年度も周術期の腎保護を目指した鎮静、鎮痛薬の腎機能保護作用の解析を行って行く予定である。
|