2005 Fiscal Year Annual Research Report
Ocular surface疾患の予後を予測できるプロテインチップの開発
Project/Area Number |
16791076
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
小泉 範子 同志社大学, 研究開発推進機構, 助教授 (20373087)
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Keywords | 眼科 / 重症眼表面疾患 / 炎症性サイトカイン / インターロイキン8 / 蛋白解析 / Stevens-Johnson症候群 |
Research Abstract |
重症眼表面疾患患者の涙液中サイトカインの定量による病態評価 昨年度に引き続き、重症眼表面炎症性疾患患者(Stevens-Johnson症候群、眼類天疱瘡、化学外傷)から1-数μlの涙液を採取し、プロテインチップを用いた炎症性サイトカインの定量を行った。 本年度は眼表面疾患の臨床経過と涙液中インターロイキン8(IL-8)濃度との関連に注目し、細隙灯顕微鏡による結膜充血や角膜上皮欠損などの炎症に関連する所見と、同一観察時に採取した涙液中のIL-8濃度との関連をレトロスペクティブに検討した。その結果、急性期のStevens-Johnson症候群や化学外傷で遷延性上皮欠損や強い結膜浮腫や充血を伴っている症例において涙液中IL-8が上昇しているのみならず、臨床的には炎症が鎮静化されていると思われた症例においてもIL-8が上昇している場合があった。Stevens-Johnson症候群や眼類天疱瘡では慢性期にも炎症が遷延し、時として急性増悪を生じることがあるが、涙液中IL-8濃度の変化は臨床所見の悪化を予測する指標となる可能性が考えられた。 さらに急性期Stevens-Johnson症候群の同一患者の両眼に異なる術式の眼表面再建術を行い、術後の涙液中IL-8濃度を定期的に定量した結果、培養角膜上皮シートを用いた再建術後には角膜輪部移植後よりも速やかに涙液中IL-8が正常化することが明らかとなった。培養角膜上皮シート移植術は上皮欠損を速やかに修復するために術後早期から眼表面の消炎が得られることが報告されているが、IL-8の正常化は培養角膜上皮シート移植の有用性を客観的に示すデータと考えられた。 本研究結果より、重症眼表面炎症性疾患における涙液中サイトカインの定量は、臨床的な細隙灯顕微鏡所見と組み合わせて評価することによって、数値化が難しい眼表面炎症を定量的に評価し、病態解明および予後を予測するために有用な方法であることが示唆された。
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