2004 Fiscal Year Annual Research Report
HIV-1の感染性を増強するNefの機能部位の同定及び宿主因子の検索
Project/Area Number |
16791152
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
飛梅 実 国立感染症研究所, 研究員 (60370962)
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Keywords | HIV-1 / Nef / 感染性 / VSV-G |
Research Abstract |
長期未発症HIV-1感染者(LTNP)のnef遺伝子を組み込んだHIV-1実験室株の感染性が優位に低下することを明らかにしてきた。AIDS期患者由来のnef遺伝子を組み込んだウイルスの感染性は野生型と同等以上の感染性を示す。このnefによるウイルスの感染性増強作用はHIVやMuLVのenvのような細胞膜表面で膜融合を誘導するenvを持ったシュードウイルスの場合に認められるが、VSV-Gといったエンドソームでの酸性条件下で膜融合するものでは認められない。本研究では、膜融合部位がnefによるウイルス感染性増強能に与える影響について検討した。 <材料>ウイルス株は実験室株であるNL43のenvを欠損したもの(NL-Δenv)を用いた。シュードタイピングに用いるenvはHIV-1、VSV、Sind、RRV由来のenvを用いた。NL-Δenvおよび各種のenv発現プラスミドを293T細胞にリン酸カルシュウム法を用いてコトランスフェクションを行った。48時間後に培養上清を回収し、ウイルス液とした。標的細胞としてMAGIC5細胞を用いた。 <方法及び結果>VSV-Gシュードタイプウイルスを細胞表面で融合させるためpH5.4の培養液を用いパルスした。酸性培養液でパルスせずVSV-Gシュードタイプウイルスを標的細胞に添加した場合、アンモニウムクロライド、バイフィロマイシンA1といったエンドソームのpH低下を抑制する薬剤処理により完全に感染性を示さなくなる。酸性条件でパルスした場合、VSV-Gシュードタイプウイルスは上記薬剤存在下でも感染性を示した。しかし、Nefの存在、非存在での感染性の優位な差は認められず、Nefによる感染性増強能は膜融合部位には依存しないことが示された。一方酸性条件下で膜融合を起こすSind、RRV由来のenvシュードタイプウイルスではNefによるウイルス感染性増強能が認められた。 <考察>Nefによるウイルス感染性増強能は、膜融合部位ではなくEnvに依存することが示唆された。Nefはミリストイル化されるタンパクであり、ウイルス産生細胞内でEnvに修飾を与えていることが考えられる。今後二次元電気泳動法による解析を中心にNefによるEnv修飾の有無を確認する。 以上の結果は第52回日本ウイルス学会総会で発表した。
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