2005 Fiscal Year Annual Research Report
可視光で触媒効果を発揮する二酸化チタンの歯科への応用
Project/Area Number |
16791167
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
西村 知子 神奈川歯科大学, 歯学部, 助手 (70367259)
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Keywords | 二酸化チタン / 活性酸素 / 光触媒 / 生活歯 / オフィスブリーチング / 過酸化水素 / ルミノール発光 / 浸透 |
Research Abstract |
今回の研究は,漂白材中の過酸化水素の歯質の浸透性を検討した.新鮮ヒト抜去犬歯の歯頸部から2mm根尖寄りの位置で切断し,根尖方向から髄腔内を清掃して次亜塩素酸ナトリウムで洗浄した.次に,歯根面と切断面から切縁側5mmを覆うようにシリコンチューブにはめ込み,歯頸部を接着剤でシールして試料とした.試料を脱イオン水(DW)に浸漬する対照群(Control),35%H_2O_2を主剤とするHi Lite処理群(Hi)3.5%のH_2O_2と可視光応答型二酸化チタンを主剤とするMGC-01処理群(MGC)の3群(n=5)に分けた.続いて切縁側を下にし,髄腔内にDW150μlを入れて,業者指定の方法で調整した漂白材を唇側エナメル質に作用させた.漂白開始から5,10,15分後にDW40μlを採取し,DW中のH_2O_2の測定を微弱発光測定装置(浜松ホトニクス)を用いたルミノール発光法にて行った.測定完了した試料は髄腔内を一層削除した後,内部のスミアー層の除去と象牙細管を開口させる目的で5分間リン酸処理し,同様にH_2O_2の浸透量を測定した.象牙細管を開口させなかった試料はH_2O_2の浸透が確認できなかった.これは,残存象牙質の厚さと,象牙質と歯髄の境界に漂白材の浸透を妨げる何らかの因子が存在するためと考えられる.そのため,高濃度H_2O_2を用いた漂白においても歯髄刺激がさほど発現しないのはこのためであると推察される.一方,象牙細管を開口させた試料は,Control群では検出されなかったが,Hi群では多量,MGC群ではわずかなH_2O_2の浸透が認められた.H_2O_2の浸透が認められた2群では同一実験群内において検出量にばらつきが認められるもののすべての試料で経時的に検出量が増加する傾向があった.これによりエナメル質表層だけでなく象牙質にも漂白材が作用していることが示された.臨床において漂白の効果に個体差があるのはその歯の象牙細管の狭窄程度,エナメル質の亀裂,エナメル葉,エナメル叢の状態の違いなどによる思われる.今回の同一実験群内における検出量のばらつきは,個々の歯の構造の違いに起因すると考えられる.
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