2004 Fiscal Year Annual Research Report
MRIから見る高齢者における口腔の形態的・機能的要素と脳灰白質容積の関連
Project/Area Number |
16791180
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 進太郎 東北大学, 大学院・歯学研究科, 助手 (00361105)
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Keywords | 認知症 / 現在歯数 / MRI / 灰白質容積 |
Research Abstract |
社会構造の高齢化に伴う認知症患者の増加は大きな社会問題となっている。本邦ではアルツハイマー病患者が増加傾向にあり、その早期発見や治療に関する研究が精力的に行われている。近年、歯の喪失と認知症との関連を示す疫学研究や動物実験の結果が報告された。しかし、ヒトにおける歯の喪失が、いかなる脳の形態的変化を惹起するのかは未だ不明である。そこで今年度は、高齢者の脳MRI画像から得られる脳灰白質容積と現在歯数との関連について分析を行った。 被験者は、脳疾患の既往および現症がなく、うつ状態および認知障害のスクリーニング検査の基準を満たした健常高齢者195名(男性93人、女性102人、69〜75歳)とした。被験者には研究の趣旨と内容および安全性について口頭および書面にて十分説明し、インフォームドコンセントを得た。撮像したMRI画像(T1強調像)を脳画像解析ソフト(Statistical Parametric Mapping 99;SPM99)を用いて画像処理を行い、現在歯数を独立変数とした際の回帰分析を行った。 その結果、側頭葉内側部、前頭連合野および頭頂連合野に現在歯数と正の相関を有する領域が観察された。側頭葉内側部は海馬付近にほぼ相当すると考えられ、記憶の形成や変換過程に重要な役割を担う。前頭・頭頂連合野は、計算や思考、空間認識などの高次機能と関係することが知られている。これらの領域はアルツハイマー病で萎縮が観察される領域でもある。以上の結果は、高齢者における歯数と認知症の発症との関連におけるevidenceを提供するものと考えられる。
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