2004 Fiscal Year Annual Research Report
唾液腺導管上皮細胞におけるABCトランスポーターの発現と機能解析
Project/Area Number |
16791267
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Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
堂東 亮輔 松本歯科大学, 歯学部, 助手 (40329470)
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Keywords | MDR1 / MRP1 / GST-pi / 唾液腺癌 |
Research Abstract |
今回の研究は、ヒト正常唾液腺組織と唾液腺癌組織およびヒト唾液腺導管上皮由来培養細胞(以下HSG細胞)を使用し能動的薬物排泄機構について検討した.これまでに、ヒト正常唾液腺導管上皮細胞の細胞膜と抗癌剤処理したHSG細胞に多剤耐性遺伝子産物であるMDR1の高発現を認めている.さらに本研究の予備実験では,MDR1の機能を拮抗剤で阻害しても他の薬物排泄がみられることを明らかとしており,異なる生体の高分子蛋白やホルモンを基質として能動的に代謝している可能性が考えられた.そこで、MDR1の構造と類似しているMRP1に注目し研究をすすめ、さらに、MRP1の基質となるグルタチオン抱合体の形成を触媒するGSTクラスについて検討した。その結果,免疫組織化学的解析では、正常ヒト唾液腺におけるMDR1とMRP1の発現は類似しており、線条部導管上皮細胞と排泄部導管上皮細胞の細胞質に検出され,GST-piはGST-alphaとGST-muに比べ弱い染色性を示した.しかし、腺様嚢胞癌では、MDR1とMRP1は主に管腔構造をとる腫瘍細胞で発現し、GST-piは均一に強染した.イムノブロット法では、薬剤耐性形質を示すHSG細胞は、親株細胞に比べて、強いMDR1、MRP1の発現に加えGST-piの誘導がみられた。RT-PCRではGST-pi-mRNAの発現にともなって、MRP1-mRNAの発現が認められた。以上のように、HSG細胞では、MDR1に加えGST-piの発現に伴うMRP1の薬剤排泄機能の亢進が考えられたことから、MDR1とMRP1およびGST-piの阻害剤を用いて耐性克服実験を行なった。抗癌剤耐性のHSG細胞にベラパミルを作用させると、抗癌剤による細胞毒性が著明に増強され、ベラパミルとGST阻害剤であるクルクミンを作用させると、さらに細胞毒性が増強された。
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