Research Abstract |
口唇口蓋裂や小舌症などの先天異常を含む外科的矯正治療を必要とする骨格的下顎前突症患者において,歯科矯正治療や顎矯正手術にともなう発話行動の変化を評価するため,顎運動・音声同時解析システムの構築および検討を行った。 初診時,顎矯正手術前,術後3か月,6か月,12か月の時点における (1)構音運動開始まで,さらに構音運動開始から発声終了までに要した時間について (2)構音運動開始から発声終了までの総筋活動量,顎運動量,顎運動領域について (3)聴覚的心理実験による音声の心理学的評価 について検討し,さらに手術にともなう形態学的変化・後戻り・手術法などの検討を加え考察した。 その結果,骨格性下顎前突症患者のうち口唇口蓋裂患者の顎矯正手術において,上顎骨延長術の選択は,術後の安定性,後戻りの減少,機能的な影響が少ないことなどから,特に瘢痕による上顎劣成長の見られる症例において,有効であることが示された(松崎雅子他:口唇口蓋裂患者における上顎骨延長術と後戻り-一期的移動術との比較-第29回日本口蓋裂学会総会・学術集会 2005年5月26日,松崎雅子他:口唇口蓋裂患者における上顎骨延長術と後戻り 第64回日本矯正歯科学会大会 2005年10月12-14日)。また,構音運動や顎運動機能は顎矯正手術直後には開口量の減少,口腔内の急激な形態変化などから一時低下するものの,徐々に回復し術後6か月以降,明瞭度が上がり,発声までに有する時間,筋活動量も減少しよりスムーズな発話行動がみられることが明らかとなった(和田満美子,松崎雅子他:小舌症と小下顎症を伴う1症例の下顎歯列弓拡大後の構音第50回日本音声言語医学会総会・学術講演会 2005年10月28日)。
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