Research Abstract |
本研究は,脊椎の機能障害を持つ患者が希望を抱くための支援を明らかにすることを目的としている。今年度は,人生中途にして脊椎の機能障害を持ち,急性期を脱して地域で生活する患者を対象に面接調査を行った。その結果,患者の希望に影響を与える要因として,医療者との関わり,自己と同様に脊椎の機能障害を持つ患者との出会い,活動範囲があることが分かった。このことは,昨年度,文献や自伝から明らかにした「脊椎の機能障害を持つ患者の希望とその要因」とほぼ一致していた。 「医療者との関わり」について,多くの患者が「患者と接する看護師の知識不足」,「患者の状態への看護師の無関心」について語った。このことは,医療のみではなく看護においても専門化が進む今日,リハビリテーション看護や運動機能障害に関する看護の専門性が日本においては未だ確立されていないことが一因であると考える。このことが,整形外科領域の看護者の意欲に少なからず影響していることが考えられる。 「活動範囲」については,範囲が拡大すればするほど,希望を抱きやすくなっていた。活動範囲は,生活する空間の段差が少ないこと,エレベーターがあることなどの設備面も重要であったが,それ以上に周囲の人々の障害者に対する意識が大きく影響していることが分かった。既存の設備であっても,少しの工夫や周囲の援助により活動範囲は拡大する。希望を抱くためには,工夫のための知識や周囲の援助を受け入れることが必要であった。 「脊椎の機能障害を持つ患者との出会い」があることで,自己の今後の辿る道を予測できる,辛い気持ちを共有できることにつながっていた。ただ,この出会いは,患者自らがインターネットや他の患者を通じて獲得しており,医療者からの紹介によるものではなかった。今後は,医療者が患者会などの存在を知り患者に伝えていくことが,患者が疾患を持ちながらも前向きに生きていくことにつながるといえる。 今後は,在宅で生活する人のみでなく,病院で療養中の患者にも面接を行い,障害を持ってからの時間などが,希望を抱く過程に影響するかどうか探求していく必要がある。
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