2016 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative magneto-climatostratigraphical study of loess-paleosol sequences from Asia and Europe
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16F15328
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
兵頭 政幸 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 教授 (60183919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BRADAK BALAZS 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | ヨーロッパレス / 磁気・気候層序 / 地磁気逆転 / MIS 19 / 冬季モンスーン / 津波堆積物 |
Outline of Annual Research Achievements |
外国人特別研究員が来日時に、持参したハンガリーレス試料の予察的古地磁気分析により、78万年前のMatuyama-Brunhes地磁気極性境界の位置を地層の厚さ3m以内に決めることができた。平成28年10月に、ハンガリー・ブダペスト市の約150km南に位置するパクシュ(Paks)市のレスの露頭において、厚さ約4mの地層から約2cm間隔で定方位古地磁気試料を採取した。この試料について、粒度分析、環境磁気分析をほぼ完了し、古地磁気分析についても約1/4を終えている。また、千葉県市原市の海成層「千葉セクション」から採取済のコア試料と露頭試料について詳細な環境磁気分析を行い、海洋同位体ステージ(MIS)19の詳細な・古気候・古環境変動を明らかにした。 MIS 19間氷期について、ハンガリーレス、中国レス、千葉セクションの古地磁気、古気候・古環境記録を対比した。その結果、古気候層序における地磁気逆転のタイミングが3地点で一致すること、逆転途中の古地磁気強度減少期に、気候の異常が存在することを見つけた。また、ハンガリーのレス・古土壌層の氷期・間氷期対比の見直しが必要なことが分かった。これらの成果は地球惑星科学連合、地球電磁気・地球惑星圏学会において発表した。また、一部の成果は、国際誌に投稿した。ハンガリーレスの古気候学的成果、古地磁気学的成果は、2017年地球惑星科学連合大会にて発表する。 外国人特別研究員はレスの帯磁率異方性から、堆積構造や風向の推定を行う研究をすすめてきた。この技術を、国内の堆積物に適用する研究も行った。青森県の太平洋沿岸平野で採取された津波堆積物の帯磁率異方性を測定して、2011年東北沖地震津波の内陸部への伝搬に伴う堆積構造の変化を明らかにした。この成果については、国際誌Marine Geologyに公表した。また、2017年地球惑星科学連合大会にて発表する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
間氷期MIS19にMatuyama-Brunhes地磁気極性境界が位置することは分かっている。しかし、深海底堆積物コアのデータは、北大西洋では、同間氷期の後半に、太平洋やインド洋では前半に記録されるという、矛盾が存在していた(Hyodo and Kitaba, 2015)。当初、予察的分析結果によると、ハンガリーレスの記録は北大西洋型であった。しかしながら、2016年秋に採取した高密度で採取した試料の予察的分析結果を、中国レスの記録、千葉セクションの記録と千年スケールで対比すると、これまでMIS 18の氷期と解釈されてきたレス層を、MIS19.2海水準低下期に対比することで、磁気気候層序の全ての特徴が一致することを発見した。同時に、北大西洋の古海洋変動記録についても見直す必要があることが分かった。この成果については、千葉セクションのデータを中心とした論文にまとめ国際誌に投稿した。また、ハンガリーレスと中国レスの粒度分析結果と帯磁率変動を用いた気候層序対比により、地磁気逆転期の冬季モンスーンの強化が起こっていることを発見した。これについては、2017年地球惑星科学連合大会にて発表を行い、国際誌に投稿予定である。以上の成果は、当初の予想を超えるレベルの発見である。 津波堆積物の研究は、2016年11月に試料を入手し、分析を開始し、津波のダイナミクスを明らかにした。2017年1月にその成果を投稿した。これまで、帯磁率異方性を用いた津波堆積物の研究は存在したが、津波の記録の有無の判定指標に使うだけで、津波ダイナミクスまで議論を進めた研究は初めてである。非常に基礎的な研究であるが、今後、大いに発展が期待できる。この成果についても、当初の予定を越える成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
ハンガリーレスの古地磁気分析は交流消磁実験に加え、今後、熱消磁実験を含めた分析をすすめ、Matuyama-Brunhes地磁気逆転の詳細なデータを取得して、古地磁気論文を投稿する。ヨーロッパレスから千年スケールの同逆転データを出すのは、初めての試みである。磁気分析とそのデータ解析には、時間と労力がかかるので、実験補助員を雇用する。同レス堆積物の環境磁気分析もすすめ、帯磁率異方性から、風向を推定する。ハンガリーには、アフリカのサハラ砂漠とシベリアから風送塵が飛来することが分かっている。これらは方向が異なるので、分離できる可能性がある。予察的分析結果は、温暖期と寒冷期で卓越風の方向に違いが見られることが分かっている。ハンガリーレスと中国レスについて、千年スケールで磁気・気候層序対比を行う。それによって、ユーラシア大陸の東西で共通する古気候の特徴を明らかにし、広範な地域にわたる内陸気候システムの解明を行う。 千葉県市原市の千葉セクションにおいて、露頭試料を採取し、帯磁率異方性と古地磁気・環境磁気分析を行い、コア試料の方位と古気候変動を明らかにする。それにより、MIS19間氷期の詳細な気候層序を明らかにし、ハンガリーおよび中国のレス記録と対比してグローバルな気候を解明する。 基礎研究として、津波堆積物の帯磁率異方性から津波の流速を推定する方法の開発も行う。これについては、すでに理論的研究をすすめてきた。今後、堆積物試料の帯磁率異方性から、それを検証するデータを取得する。
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Research Products
(10 results)