2016 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀後半期の東アジアにおける稲作農業と農村社会の変貌
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16F16002
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
松重 充浩 日本大学, 文理学部, 教授 (00275380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PIAO JINGYU 日本大学, 文理学部, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 満洲 / 農村 / 日中関係 / 相互連関 / 朝鮮人 / 移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終的な目的は、新中国成立以降における現地朝鮮人を中心とする東北地域稲作農業の展開過程と集落の変貌を、農村部の改革開放政策と日本人稲作技術者の活躍などを併せて検討し、中国成立以降約50年間の中国農村社会の変貌実態と稲作農業をめぐる日本・中国・韓国の民間交流実態を明らかにすることにある。 以上の目的遂行のため本年度は、主に、二つの領域で研究を実施し、それぞれ以下の成果を得た。
1.中華民国あるいは「満洲国」の時期における、現地の政治・経済・社会に関する実態把握を、1949年以前に中国東北地域で刊行された新聞資料や定期刊行物(『満洲日日新聞』、『満蒙』、『朝鮮及満洲』など)および各種経済統計などの文献史料の分析を通じて行った。その結果、本研究の目的追究において必須となる、中華人民共和国成立前の朝鮮人移民の中国東北地域への定住に伴う稲作農業の実態を、南満・中満・北満のそれぞれに関して、食糧政策と栽培された米の品種と米の需給状況から明らかにすることができた。また、この状況の背景にある、日中間相互の地域社会構想のありように関しても明らかにすることができた。
2.「満洲国」期と中華人民共和国期の中国東北地域農業における技術的連続性に関する史料(日中双方の各種回想録等の各種文献記録)を精力的に収集すると共に、当該期の経済データについても収集・整理をおこない、断代史的把握ではなく連続的に中国東北地域史を再構成していく上で必須となる資料環境の整備を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究の目的追究における必須の作業となる、中華人民共和国成立前の中国東北地域社会に関する文献史料の収集・整理・分析を中心に研究を進めた。その結果、未公開資料である『海林朝鮮民族100年史』や『黒龍江省五常市民楽朝鮮族郷水稲生産発展史』などの発掘を含む新たな史料水準の獲得と、現地朝鮮人移民社会の形成過程の把握が可能となった。同時に、次年度に予定している現地調査の準備ともなる、日中関係の基底をなす、日本人の中国認識と中国人・朝鮮人の日本認識の把握ができた。これらの成果は、次年度予定しているヒヤリング等の現地調査をより効率的かつ可能性の高いものとする成果となており、初年度の成果としてはおおむね想定した内容になったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度の成果を踏まえて、中国東北の朝鮮族村落に関係した日中双方の関係者から聞き取り調査やアンケート調査を実施する。特に、有質米の主な生産地として知られている村落を取り上げたい。より具体的には、上等米の生産と農事合作社の実施などから注目を集めている五常市民楽郷、朝鮮族の集中居住地として1930年代からも注目を浴びている海林市新安朝鮮族鎮、1933年に朝鮮総督府の支援を受けて東亜勧業が設立した安全農村の1つであった珠河市河東朝鮮族郷、といった3つの地域を選定し、聞き取り調査を行い、データの収集し分析をすすめたい。
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Research Products
(6 results)