2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16F16003
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
斎藤 英喜 佛教大学, 歴史学部, 教授 (40269692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KWON DONGWOO 佛教大学, 歴史学部, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 神話解釈史 / 中世神話 / 近世神話 / 近代神話 / 神道史 / 教派神道 / スサノヲ / 檀君 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代に形成された教派神道の「国家神道」に回収されない宗教アイデンティティを「神話解釈史」によって改めて考えて見ることがその目的である。この目的を達成するために二年間にわたり、教派神道、主には出雲大社教と神道大教を中心として研究を進め、さらに東アジアを視野に入れることによって近代の国民国家体制の下で教派神道の求めた宗教アイデンティティが東アジアの宗教形成に与えた影響を考えることが課題になっている。今年度には教派神道の教団の訪問と韓国に残っている教派神道の痕跡などの調査を行なったが、まだ成果よりも課題が大きい。また、日本の教派神道教団の訪問調査の過程で明らかになったのは、近世から近代、そして戦後の教派神道はその内容の変貌が継続しており、そこには「中世神話」の解釈・注釈世界と同様な新たな神話創造が働いているという点であった。そこで本研究では近代に形成した教派神道の経典などを中心にその変容の過程に注目した。研究の内容は、まず、研究方法である「神話解釈史」の可能性を確かめ、また、「神話」概念の拡張のために月2回の「近世神話研究会」を行なった。その成果として共同研究者は「神話解釈史から見る富士山の祭神変貌論」を出した。また、教派神道と韓国との関係を考える基礎作業の一環として近世から近代にわたる「日鮮同祖論」を神話解釈史の視点から再検討するなど、ようやく教派神道とスサノヲ・檀君の関係、さらに檀君とアマテラスとの関係に移っていく研究の基礎ができた。研究責任者の「<神道史>の中の折口信夫」も「神話解釈史」による折口信夫への再評価であり、この方法論はその可能性を拡大しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のために研究一年目には数多い教団を訪問した。今年度に訪問した教団は、出雲大社教、神道大教、神理教、扶桑教、神道修正は、神習教、大成教などであり、事前連絡をした上でインタビューを行うなど、多い情報や資料を得ることができた。特に、神理教の場合、共同研究者が事前に書かれた論文があったので、それを基にして様々な情報交換ができ、教団関係者から多い資料を得た。また、資料調査としては国会図書館・国学院大学・滋賀大学・東京大学・名古屋大学など、各地域の大学に散財している文書資料を調査した。このような調査の上、「神話解釈史」の可能性を広げる論文「神話解釈史から見る富士山の祭神変貌論」が国際日本文化研究センター発行の雑誌『日本研究』に掲載を予定しており、スサノヲと檀君との関係を神話解釈史の視点から捉える「日鮮同祖論」研究は、韓国で発表して論文投稿を準備している。また、教派神道研究において重要な一つの視野は、教祖以降の宗教アイデンティティを考えるものにあり、最近は出雲大社教で発行した雑誌『幽顕』1号から8号、またそれと関わる様々な雑誌の内容を確保、分析している。特に、その中にはスサノヲの神格変化や朝鮮布教に関する内容などが多く含まれているので、その分析によって 大正期における大社教の韓国布教問題と神道としての宗教アイデンティティ問題などがさらに明らかになると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1)教派神道の朝鮮布教に関する資料調査:大社教・神道大教を始め各教派神道の幾つかの教団に視野を広げつつフィールドワークを続ける。特に、各教団の地域拠点を中心として調査を行い、両教団との共通点や差異などを明かすことによって、近代神道の多様な宗教アイデンティティを究明する。また、教派神道の朝鮮布教に関する資料の中、日本各地域の図書館・資料館のコレクションなどに保存されている韓国近代関係の貴重な新聞・雑誌なども必要なため現地調査していく。 2)教派神道の朝鮮進出の検討と論文投稿:教派神道がどのように朝鮮に進出し、日本でなされた布教の様相が植民地朝鮮で応用されていったかについて分析する。特に、教派神道が朝鮮という地域空間の中でどのような教義・儀礼・組織などの変容を見せるかについて詳しく明かす。研究成果は国内外の研究会や学会で発表し、学術雑誌に掲載する。
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Research Products
(4 results)