2016 Fiscal Year Annual Research Report
先進潤滑機能発現を目指すイオン液体/固体界面の分子配列構造制御と分子レベル解析
Project/Area Number |
16F16075
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉村 博之 京都大学, 工学研究科, 教授 (10293656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MUNGSE HARSHAL 京都大学, 工学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-07-27 – 2018-03-31
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Keywords | イオン液体 / 周波数変調原子間力顕微鏡 / 固液界面 / フォースカーブ / イオン結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
イオン液体はアニオンとカチオンのみからなる室温で液体状の塩であり、水や有機溶媒などの分子性液体とは本質的に異なる。イオン液体は新規潤滑剤として大きな期待を集めているが、その発現のためには、イオン液体/固体界面構造の本質的な理解が必要である。 当研究室では、これまでイオン液体/固体界面構造を高分解能分析可能な周波数変調原子間力顕微鏡 (FM-AFM) の開発を進めてきた。 本年度は、これを用い、アルカリハライドの一つであるKBrをモデル材料に選び、KBr(100)面および(111)面とイオン液体との界面構造について分析を行った。KBr(100)面は、K+イオンとBr-イオンとが周期的に面内に分布しているため、電気的に中性な低エネルギー面である。一方、KBr(111)面はK+イオンもしくはBr-イオンの一方のみが表面に露出しているため、電気的に帯電している。これらについて、イオン液体との界面構造のFM-AFM分析を行った結果、まずKBr(100)面では、結晶構造に対応した原子分解能表面形状像が明瞭に観察された。すなわち、低エネルギー面である(100)面はイオン液体中においても安定であることが示唆された。一方、(111)面においては、原子分解能表面形状像が得られたが、その構造は結晶構造と比較して明らかに歪んでいることが確認された。(111)面は高エネルギー面であり、イオン液体との界面において表面再構成などによる安定化が進んでいることが示唆された。 また、FM-AFMを用いたフォースカーブ測定により、(111)面においてのみ探針-試料表面間距離に対し周期的な力の変調が確認され、イオンペアを単位とする層状の溶媒和構造の形成が確認された。このように、同じ材料でありながら、その表面物性の違いが界面構造に大きな影響を与えることが実験的に確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずモデル系材料であるKBr(100)面と(111)面において、いずれもFM-AFMによる原子分解能分析を達成した。 さらに、FM-AFMによるフォースカーブ測定において、固-液界面におけるイオン分布 (溶媒和構造) に対する面方位の影響についても、明瞭な実験結果を得ることができた。このように、モデル系試料に対して十分な成果が得られており、概ね順調に推移していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、前年度に培った知見をもとに、潤滑材料としてより実用的な系であるイオン液体とグラフェン系材料との界面分析に取り組む。酸化グラフェンやその還元体、さらには窒素などを用いた化学ドープ酸化グラフェンなどを対象に、巨視的な潤滑特性と原子レベルAFM界面分析とを組み合わせることで、潤滑機能発現メカニズムを明らかにするとともに、先進潤滑材料開発につなげる。
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