2016 Fiscal Year Annual Research Report
粒子態有機物上に存在するウイルスの海洋生態系における機能の解明
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16F16085
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
横川 太一 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生命理工学研究開発センター, 研究員 (00402751)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DE CORTE DANIELE 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生命理工学研究開発センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-07-27 – 2019-03-31
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Keywords | 水圏ウイルス / ファージ / 微生物海洋学 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋生態系に遍在するウイルスは他の生物を圧倒する数で存在し(海水1mL中に一万から百万粒子;ホストである細菌の10から100倍の密度),生態系における細菌生物量の主要な変動要因として存在していることがわかってきた.また,ウイルスはホストとなる細菌生物量を決定するだけでなく,「ホストへの感染から致死・溶菌に至るまでのプロセス」で,海洋生態系の「微生物を介した物質循環経路」および「他の微生物群集動態の決定」に強く関わっていることも明らかになってきている.しかし,現時点での知見では,海洋におけるウイルスの生態を示す統合的な理解には至っていない.この問題の解決には,海水中における,ウイルスの有機物粒子としての挙動の理解と,ウイルスと宿主との相互作用の機構を理解することが必要不可欠である. 本研究は,ウイルス生態の体系的な理解を構築する解析の一つとして,次の2課題に焦点をあて,その機構を明らかにすることを目的としている.1)ウイルスと非生物有機物質粒子間での物理化学的な吸着・脱着プロセスの解析,2)そのプロセスに付随して起きるウイルス-細菌間の相互作用の解析. 平成28年度は「ウイルスと非生物有機物粒子間での物理化学的な吸着・脱着プロセスの解析」のための,環境試料採取法および微小生態系実験の構築・試行・確立を行った.また,環境試料および微小生態系実験試料の両方の解析に適用が可能な,放射性同位体で修飾したヌクレオシドを用いた,ウイルス粒子生産速度を見積もる手法を確立した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では,平成28年度課題としていたウイルスと非生物有機物粒子間での物理・化学的な吸着・脱着プロセスの解析」に向けて,当初の予定通り,環境試料採取および微小生態系実験の確立を行った.また,環境試料および微小生態系実験試料の両方に適用が可能な,放射性同位体でラベルしたヌクレオシドを用いた,ウイルス粒子生産速度を見積もる手法を確立にも成功している.予定した項目に関して,着実に結果がでてきているので,「おおむね順調に進展している」を選択した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は研究計画のうちの2つ目の課題「ウイルスー細菌間の相互作用」の解析を実施する.この課題も自然環境での観測および微小生態系を用いたモデル検証の2つから構成される. 自然環境での観測:沿岸域の表層の試水を採取後,その試料中の細菌数,ウイルス数の計数,ホストとなる細菌の活性測定,単位時間あたりに細胞外に産出されるウイルス数の測定,細菌叢およびウイルス叢の解析を行う. 微小生態系を用いたモデル検証:自然環境での観測結果から作成する「ウイルスー細菌間相互作用の動態モデル」の検証のため,人工的に作成した微小生態系実験を行い,その系での細菌およびウイルスの各パラメータの測定を行う(測定項目は環境試料観測と同じ).使用する微小生態系とは,特定の単離ウイルス,単離細菌株を使用した群集組成および生物量を厳密に調整した数百mLスケールでの培養系のことを示す. また,平成28年度および平成29年度の研究成果を国際学会(SAME15-Symposium on Aquatic Microbial Ecology, September 2017, Croatia)で発表予定である.
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