2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16F16113
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
久本 直毅 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (80283456)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PASTUHOV STRAHIL 名古屋大学, 理学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 神経軸索再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、一般に内在性マリファナと呼ばれるエンドカンナビノイドの一種アナンダミド(AEA)の生理学的役割について解析した。まず、線虫C.エレガンスにおいてAEAの合成に必要な因子としてNAPE-1とNAPE-2を同定し、次にAEAシグナルを受容するのに必要な7回膜貫通型受容体としてNPR-19とNPR-32を同定した。さらに、それが3量体Gタンパク質GOA-1を介して下流にシグナルを伝えていることも見出した。神経軸索再生におけるAEAの生理学的役割を知る目的で、野生型およびこれらの遺伝子欠損変異体におけるin vivoでの神経軸索の再生の様子を詳しく観察した。その結果、野生型の線虫では、再生中の神経軸索が切断により生じて残存した遠位側の軸索を避けるように曲がる表現型が観察されること、そしてその表現型はこれらの遺伝子を欠損すると消失することが判明した。さらに、NAPE-1を異所的に発現させると、再生中の神経軸索がNAPE-1発現神経を避けるように伸長すること、そして上述の遺伝子の欠損変異によりこの効果が抑制されることも発見した。同様の抑制効果は、GOA-1により抑制される下流のシグナル経路であるJNK型MAPキナーゼ経路の活性化によっても起きた。これらのことから、AEAは再生軸索特異的な負のガイダンス因子として、JNK経路の抑制を介して再生中の軸索を遠位の残存軸索から遠ざける機能があることが示唆された。なお、この成果は論文として報告した。 さらに、再生を促進するシグナルとして、インテグリンを介して死細胞を認識するシグナル伝達経路が、JNK経路を活性化することにより神経軸索再生を促進することを見出し、その間で機能するシグナル伝達経路を明らかにした。この成果についても論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時の計画として、残存軸索断片が(1)軸索再生を促進するシグナル(2)再生中の軸索が近づくのを抑制する負のガイダンスシグナルの2種類のシグナルを発している可能性を見いだし、これらの残存軸索断片が、外部に対してどのようなシグナルをどのような機構で発信することにより生体制御を行うのか、またその生理的意義は何かについて検討することになっていた。そのうち、今年度は(2)について解析が終了し、結果として論文の形で発表できた。また(1)についても前半部の解析が終わり、論文として発表することができた。このように2つのサブテーマの両方について研究が進み、結果時に両方とも論文発表できたことから、計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、テーマ(1)の後半部にあたるインテグリン上流の経路について解析を進める。
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Research Products
(4 results)