2016 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠期低栄養による母体への健康影響の細菌代謝物による改善
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16F16116
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
斎藤 健 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (40153811)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SIKDER Md. Tajuddin 北海道大学, 保健科学研究院, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-10-07 – 2019-03-31
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Keywords | 発展途上国 / ポリフェノール / 妊娠期低栄養 / 妊娠期栄養過多 / 糖代謝異常 / 脂質代謝異常 / ポリフェノール類似代謝物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
バングラデシュ等の発展途上国では低栄養に依存した妊娠期2型糖尿病などにより母子の健康に重篤な障害がもたらされている。カテキンなどのポリフェノール類はこれらの糖代謝の異常症を改善する有効な手段として考えられているが、その機序については不明な点が多い。 本研究では、菌類由来のポリフェノール類似代謝物質に着目し、妊娠期栄養異常が誘発する母子の糖代謝異常の改善にこれらのポリフェノール類似代謝物質が有効である可能性を検討することを目的とする。 本年度は第一に、妊娠期低栄養で飼育された子ラットの成熟後の仔ラットの糖および脂質代謝について、糖代謝、脂質代謝に関連するエネルギー代謝のセンサーであるAMPKやSirt1の変動を中心に検討した。 その結果、妊娠期低栄養で飼育された仔ラットは、成熟時のAMPKやSIRT1のタンパク発現量の増加傾向が認められた。そこで、妊娠期低栄養で、授乳期母ラットにレスベラトールを投与した群を作製し、同様な実験を行ったところ、対照群と同レベルのAMPKやSIRT1量が認められた。すなわち、妊娠期低栄養で惹起される仔ラットのエネルギー代謝活性の変動を母ラットに対するレスベラトール投与が改善効果を示すことが示唆された。 さらに、妊娠期低栄養で飼育された仔ラットは、成熟後において、脂質合成に関連する転写因子が変動しており、脂質合成系の制御がうまく働いていない可能性が示唆され、脂質合成制御系の検討も同時に進めることになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
妊娠期の低栄養が仔ラットの成熟後のエネルギー代謝異常を引き起こしていること、授乳期のポリフェノール投与が仔ラットのエネルギー代謝を正常に戻すことが明らかになった。これらの知見は、妊娠期低栄養の可能性が高い発展途上国の子供の代謝改善に授乳期の母親のポリフェノール摂取が有効に働く可能性を示唆したものであり、大変興味深い。また、糖代謝に関連するAMPK, SIRT1mTORなどの変動を指標とした、糖代謝改善に効果的なポリフェノールおよびポリフェノール類似代謝物質の培養細胞を用いた選別を進めており、当初の予定通り研究は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように妊娠期の低栄養が仔ラットの成熟後のエネルギー代謝異常を引き起こしていること、授乳期のポリフェノール投与が仔ラットのエネルギー代謝を正常に戻すことが明らかになった。 そこで、妊娠期低栄養がどの様な機構でエネルギー代謝異常を引き起こすのか、また、母ラットへのポリフェノールの投与がどの様な機構で代謝改善するのかを明らかにしていく予定である。 また妊娠期の栄養過剰による仔ラットの糖代謝、脂質代謝、エネルギー代謝の変動とポリフェノールの効果についても研究を進めていく。
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