2016 Fiscal Year Annual Research Report
ヒッグス物理とフレーバ物理による標準理論を超えた新物理学理論の探究
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16F16321
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
兼村 晋哉 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (10362609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZHENG YA-JUAN 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-11-07 – 2019-03-31
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Keywords | ヒッグス粒子 / バリオン数生成 / ニュートリノ質量 / 暗黒物質 / 超対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、階層性問題やニュートリノ質量問題、暗黒物質問題、バリオン数生成問題等を解決する為に考案された新物理学の理論を、現在稼働中のLHC実験(Run II)やその高輝度実験(LHC3000)、将来のコライダー実験と、各種フレーバー実験、暗黒物質実験等を組み合わせて検証する為の研究を行う。具体的には2つのシナリオを研究する。1つ目(シナリオA)は、最小超対称性標準理論のシナリオで、TeV領域に比べて非常に高いスケールの物理で諸問題を解決するシナリオである。2つ目(シナリオB)は、超対称性に基づくが上記の諸問題をテラスケールの物理で解決するシナリオである。このシナリオではテラスケールの物理で上記の3問題を説明する為、コライダー実験を用いて仔細に検証できる可能性が高い。本研究ではこれら2つの対照的なシナリオで、データを説明するベンチマークを見出し、かつ将来実験での検証可能性を明らかにする。 初年度では、まず2つのシナリオのうちTeV領域の物理で諸問題を説明する超対称理論に基づくシナリオ(シナリオB)に焦点を当てて研究した。特に電弱バリオン数生成のシナリオを研究する上で必要な、一般的な拡張ヒッグスモデルにおけるCPの破れに関する先行研究を精査した。ついで、シナリオBの模型の理論的性質を再検討し、諸問題を説明する物理メカニズムの改良点等を議論した。研究開始にあたり、特別研究員が数値計算と情報処理を行う為に計算機(ノート型PC)を1台購入した。さらに台湾で催された国際会議NCTS Annual Meeting、東京大学で催されたLHC研究会、高エネルギー加速器研究機構で催されたKEK Phenomenology Meeting、富山大学で開催した国際会議HPNP2017等に参加して情報収集または発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
11月1日に特別研究員が着任してから、週1度程度受け入れ研究者と特別研究員は会合を持ち、研究開始に向けた様々な議論を行った。議論には受け入れ研究者が指導している博士課程の大学院生も加わった。研究の目的はシナリオBに基づくモデルのベンチマークポイントの選定とこのモデルの検証に向けた現象論研究である。まずシナリオBのモデルである受け入れ研究者自身による先行研究を数回に分けて特別研究員に説明し、モデルの骨子や特徴について理解してもらった後、切り口としてどこから手をつけるかについて議論を行った。その結果、シナリオBのモデルにおける電弱バリオン数生成の機構に焦点を当てて研究を始めることにした。電弱バリオン数生成の基礎概念について先行研究やその他の文献を読んで理解を深めた。最終的に電弱バリオン数生成のシナリオの2つの大きな柱である電弱一次的相転移に関する理解と小林益川位相以外のCPの破れの物理の徹底的な理解が必要であると意見が一致した。そして、先行研究では、CPの破れの効果がまだ取り入れられていない点に注目し、CPの破れの効果を取り入れる研究をスタートした。先行研究や文献を参考に拡張ヒッグスセクターでのCPの破れの物理を集中的に研究した。このようにして共同研究のセットアップを行なった。平成28年の研究は、このように基礎的な事項の整理と問題意識の共有、確認などに当初の予定より時間がかかった部分もあるが、研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従って研究を実施する。平成29年度の前半は、平成28年度に開始したCPの破れの研究を行い、次いでシナリオBでCPの破れを考慮した場合についてベンチマークシナリオを考える。そして、モデルのシナリオBに現れる新種のスカラー場や右巻きニュートリノの信号をLHC実験や将来の国際リニアコライダー等の加速器実験で探索するための研究を行い、モデルの検証可能性を徹底的に調べる。また、フレーバー実験や各種宇宙実験で理論の予言を検証する研究も行う。得られた成果はレター論文にまとめる予定である。また、国内の研究会や外国の国際会議で成果発表を行う。後半は2つのシナリオのうち高いエネルギー領域の物理で諸問題を解決するシナリオ(シナリオA)の研究に入る。先行研究を精査し、現行のデータで棄却されていないパラメータ領域を研究し、ベンチマークポイントを選定する。 平成30年度は前年度に研究したシナリオAのモデルのベンチマークポイントに基づいて、各種実験を用いてモデルを検証するための研究を実施する。成果をレター論文にまとめ、また国内の研究会や外国の国際会議で成果発表を行う。最後にシナリオAとシナリオBの研究をまとめて、対照的な2つの新物理学シナリオを比較検討し将来実験で検証することによって、新物理理論の方向性を決定する研究の具体例を完成させ、可能な限り期間内にフル論文としてまとめる予定である。
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