2016 Fiscal Year Annual Research Report
Geodynamic study of ocean mass variation of NE Pacific using satellite gravimetry and altimetry
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16F16328
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
日置 幸介 北海道大学, 理学研究院, 教授 (30280564)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
YI SHUANG 北海道大学, 理学研究院, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-11-07 – 2019-03-31
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Keywords | 海面上昇 / 気候変動 / 海面高度計 / 衛星重力観測 / アルゴフロート / エルニーニョ / 陸水貯水量 |
Outline of Annual Research Achievements |
衛星重力計測(GRACE衛星) 、海洋レーダ高度計搭載衛星(JASON衛星)、および海水の温度や塩分濃度の深さプロファイル取得のためのその場観測(Argo Float)の三種類のデータを組み合わせ、それらのデータが揃う2005年から最新のデータまでの期間に関し、全球的な海水面高度のゆっくりした変化について解析を行った。具体的には、海面高度計による直接的な海面高観測値には、海水の熱膨張成分(質量の変化を伴わない成分)と海水の実質的な増加成分(陸から流入して増えた海水の分)の双方が含まれる。後者をArgoのデータから求め、また陸水から海への流入分をGRACEで求めた陸域の重力減少(氷が融解して海水に流入した分)と等量(符号は逆)と仮定し、双方が矛盾なく一致するかを調べた。その結果、エルニーニョ南方振動(ENSO)に代表される数年の時間スケールの気候変動に伴う大陸域の降水パターンの変化に起因する、氷以外の陸域の貯水量の変動が、全球海面高変動に大きなノイズとなることを確認した。またGRACEデータを用いてそれを正しく補正する手法を開発した。その結果、2005-2016の間海面高はわずかながら有意な加速成分(時間の二乗に比例する成分)を持つことが初めて示された。また、GRACEデータの解析のプロセスにおいて、これまで知られていた陸水の海域の質量変化への漏れ込みとは逆の、海水の質量変化が陸水の変化に漏れこむ現象が明らかになり、その補正が陸水貯水量の変動を正確に見積もる上で極めて重要であることが初めて認識された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
海水の質量増加が陸水の増減を推定値に漏れこむ現象を解決する手法を開発、それによりこれまで世界中で誰も正確に求めることに成功していない全球海面高の加速度的上昇を高い信頼性を持って推定することに成功した。また得られた海面高の加速度成分は、地表温度の上昇の加速度と簡単な経験的関係式を介して良い一致を示すことがわかった。本研究結果は年度が改まった2017年四月にNature Climate Change誌に論文として投稿され、現在査読結果を待っているところである。成功の原因は、海面高度計単独のデータではなく、衛星重力観測とArgo Floatのデータから間接的に推定される海面高変化と調和的であるかというSea Level Budgetの考えに基づく新しいアプローチをとったことが大きいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
海面高の変化に、数年の時間スケールの気候変動に伴う降水パターンの変化の理解が重要であることがわかったため、それをより詳細に大陸ごとに精査し、気候学的にわかっているENSOに伴う降水パターンの変化と照らし合わせる研究が今後重要になると考えられる。また加速度的な変化だけでなく、海面高の季節変化に関しても、海水の温度変化や陸水の変化と海面高度計の間に矛盾がないかを調べることが新たな研究テーマとして重要であろう。
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