2016 Fiscal Year Annual Research Report
グラフェンの歪みナノ構造のプラズモニクス開拓およびそのセンシングへの応用
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16F16332
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
志村 努 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90196543)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
VANTASIN SANPON 東京大学, 生産技術研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-11-07 – 2019-03-31
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Keywords | グラフェン歪み構造 / プラズモン特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
単原子層グラフェンで生じる伝搬表面プラズモンは、広く研究されてきた貴金属表面プラズモンと異なり、プラズマ周波数が中赤外域にあることや、プラズモン波長λsppが励起光波長λlightと比較して非常に短い(例えばλlight =3000 nmに対してλspp= 40 nm)、電圧やドーピングによりプラズモン共鳴特性を外部制御可能であること等の様々な特徴があり近年注目されている。特に、ナノデバイスへの応用に向けて、ナノ空間でグラフェンプラズモンを光励起し、その伝搬方向を制御する研究が活発に行われてきた。これまでの報告では、金属のナノプローブやナノアンテナ、不均一な周辺誘電率分布等の異種物質をグラフェンに導入することで、グラフェンプラズモンを局所的に光励起し、伝搬してきた表面プラズモンを回折・屈折・反射する方法が提案されてきた。一方我々は、グラフェン上に生じるナノサイズのシワが表面プラズモンの光励起を可能にし、シワの配列構造が表面プラズモンのエネルギーに応じて異なる伝搬方向に分類するプラズモンカラーソーターとして機能することをシミュレーションにより見出し、さらに単純なプラズモン干渉モデルでシミュレーションを再現できることを確認しその物理メカニズムがプラズモン波長λsppが励起光波長λlightと比較して非常に短いことに基づくものであることを明らかにした。このグラフェンのシワによるプラズモン励起と制御は、従来法のように異種物質を導入する必要がないため、導入に伴う欠陥の発生がなく、系もシンプルにできるため応用の幅が広がると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラフェン表面の歪みによって生じるナノ構造の局在プラズモン特性をComsol Multiphysicsソフトウェアを用いた有限要素法シミュレーションによって研究した。 具体的に用いたグラフェンモデルは、100-250nm幅のナノリッジを含む大きな単層フラットグラフェンシートで、歪みナノ構造のサイズ、形状、数をパラメーターに局在プラズモン特性を求めた。
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Strategy for Future Research Activity |
グラフェンプラズモンが貴金属プラズモンよりも極めて大きい波数を持つことに着目し、伝搬する表面プラズモンの運動量に基づく放射圧ベクトルをナノ粒子の光圧ポテンシャル解析法により測定することで、グラフェンプラズモンの波数ベクトルを高い空間分解能でイメージングする方法を世界に先駆けて開発する。エネルギーではなく運動量という物理量で測定することで、中赤外プラズモンをこれまで数多く研究開発されてきた可視・近赤外域の光計測技術でアップコンバージョン測定する、従来にない独創的な着眼点を有する。本研究が達成されれば、グラフェンプラズモンの実験研究が飛躍的に進みナノデバイス応用に向けて大きく前進すると期待される。
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