2016 Fiscal Year Annual Research Report
Small molecule activation with divalent species of heavier group 14 elements
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16F16335
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笹森 貴裕 京都大学, 化学研究所, 准教授 (70362390)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MAJHI PARESH 京都大学, 化学研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-11-07 – 2019-03-31
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Keywords | 典型元素 / スタンニレン / 小分子活性化 / クロロスタンニレン / フェロセニル基 |
Outline of Annual Research Achievements |
小分子活性化は、水素添加や二酸化炭素固定、窒素固定に代表されるように、基礎化学的に重要であるのみならず、有機合成化学、環境化学といった様々な学問領域から国際的に関心がもたれている課題である。過去に金属錯体によってこれら小分子を活性化し、合成反応へ利用した例は数多く報告されているが、希少性や毒性が問題となる遷移金属元素を活性中心とした場合にしか達成されていないという問題があることから、低毒性かつユビキタスな典型元素を用いた高活性触媒系の構築が望まれている。本研究では、豊富元素の一つであるスズを活用し、水素、カルボニル化合物等小分子活性化反応の開発を目的とした。スズ二価化学種(スタンニレン)(R2Sn:)は、オレフィンやカルボニル化合物などの小分子と容易に反応し、酸化的付加に相当する挿入反応が進行することで四価化学種を生じると考えられている。この反応性を制御し活用することで、小分子活性化触媒として機能する典型元素触媒を開発出来ると考えた。スズ二価化学種の高い反応性を保ちつつ、化合物の熱力学的安定性を増す分子設計として、窒素あるいはリン置換基と、かさ高いフェロセニル置換基をあわせもつスタンニレン(Fc*(R2N)Sn:, Fc*(R2P)Sn:)を考えた。本年度は、かさ高いフェロセニル基(2,5-ビス(3,5-ジ-t-ブチルフェニル)1-フェロセニル)のリチオ化体の単離を行い、これに対し、塩化スズ(II)を作用させることで、安定なフェロセニルクロロスタンニレン(Fc*SnCl)を、塩素架橋二量体として合成・単離することに成功した。X線結晶構造解析および各種スペクトル測定を行い、合成した化合物の構造的特徴を明らかとした。さらにSn-Cl部分への求核置換反応を利用して窒素置換基やリン置換基の導入を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、かさ高いフェロセニル基と、アミノ基またはホスフィノ基を有する、安定なスズ二価化学種(スタンニレン)の合成と、それを用いた小分子活性化反応の開発を目的としている。かさ高いフェロセニル基を簡単に導入することができる前駆体であるリチオ体は、既知物であるため、既に数グラムのスケールで合成準備できている。また、これに対し塩化スズ(II)を反応させることで、対応するクロロスタンニレン(Fc*SnCl)を合成・単離し、その同定を既に行った段階である。クロロスタンニレンに対してアミドリチウムなどの窒素求核種を作用させ、置換反応が進行することは既に既知の反応であるため、本フェロセニル(クロロ)スタンニレンに関しても、同様に速やかに進行する反応であると期待できる。それ故、目的とするフェロセニル(アミノ)スタンニレンや、あるいはホスフィドリチウムとクロロスタンニレンとの反応で生じると考えられるフェロセニル(ホスフィノ)スタンニレンも、次年度には速やかに、合成・単離が可能であると考えられる。そして小分子活性化反応の検討を速やかに始めることができると考えられ、研究はおおむね順調に進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度単離に成功したフェロセニル(クロロ)スタンニレンを前駆体とし、各種アミドリチウム種(R2NLi)およびホスフィドリチウム種(R2PLi)を作用させることで、対応するアミドおよびホスフィノスタンニレンを合成・単離する。さらに各種スペクトル測定および単結晶X線構造解析を行いこれらの分子構造と物性を明らかとする。これらの構造的知見に基づき、アミンやアルコール、エチレンなどの小分子活性化反応を検討する。特に分子構造や物理化学的性質から、理論計算などを用いて反応性を予測し、実験結果と比較検討することで、さらなる活性化反応の分子設計へとつなげる。特に小分子活性化反応の生成物を精査し、四価スズから還元的脱離を経て二価スズ化学種(スタンニレン)を再生する反応経路も模索し、最終的な典型元素触媒開発の基盤となる知見を集積する。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Synthesis of a 1-Aryl-2,2-chlorosilyl(phospha)silene Coordinated by an N-Heterocyclic Carbene2016
Author(s)
Kyri, A. W.; Majhi, P. K.; Sasamori, T.; Agou, T.; Nesterov, V.; Guo, J.-D.; Nagase, S.; Tokitoh, N.; Streubel, R.
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Journal Title
Molucules
Volume: 21
Pages: 1309
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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