2016 Fiscal Year Annual Research Report
配列制御されたらせん高分子の自己組織化とキラル材料への応用
Project/Area Number |
16F16341
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
八島 栄次 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50191101)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ROY RAJ KUMAR 名古屋大学, 工学研究科, 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2016-11-07 – 2019-03-31
|
Keywords | 高分子化学 / 超分子化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、側鎖に両親媒性基と官能基を導入した電子豊富ならびに電子欠乏性の芳香族ユニットからなる一方向巻きに制御されたらせん高分子を設計・合成し、分子鎖内あるいは分子鎖間での電荷移動相互作用および疎溶媒性相互作用を介したらせん構造の安定化ならびに官能基または芳香族ユニットが配列制御されたらせん空間を有するナノ構造体の構築と機能の創出を目指し、以下に示す結果を得た。 4位に様々な官能基を導入したピリジン-2,6-ジカルボン酸を活性エステエルに変換した後、光学活性なジアミンを導入したジアルコキシナフタレン誘導体との重縮合反応により、新規な光学活性高分子poly-Aを合成した。さらに、ピリジン部位に導入した側鎖を四級塩化することで、両親媒性の光学活性高分子poly-Bを合成した。次に、電子欠乏性のナフタレンジイミド誘導体をゲスト分子に用い、電子豊富な1,5-アルコキシナフタレンを主鎖に有する両親媒性高分子poly-Bのらせん構造の誘起について、様々な溶媒中、円二色性(CD)および紫外可視吸収(UV-vis)スペクトル測定により検討を行った。その結果、水/メタノール混合溶媒中、電荷移動錯体に基づく吸収が観測されるとともに、アキラルなゲスト分子であるナフタレンジイミド誘導体の吸収領域に明確な誘起CDが観測された。さらに、ジアルコキシナフタレン誘導体に基づく吸収領域のCD強度も増加したことから、poly-Bとゲスト分子との電荷移動相互作用を介してその錯体にキラルな構造が誘起されることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の計画と期待通り、側鎖に両親媒性基を導入した電子豊富な芳香族ユニットからなる光学活性な高分子を設計・合成した。また、新規に合成した光学活性な高分子とゲスト分子間での電荷移動相互作用を介してアキラルなゲスト分子がキラルな空間に位置することを明らかにした。本研究成果は、キラル空間を利用した不斉触媒やキラル分離材料の開発に繋がる成果であると言えることから、本研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度までに得た知見をもとに、官能基とともに両親媒性部位を有する側鎖を導入した電子豊富ならびに電子欠乏性の芳香族ユニットからなる光学活性ならびに光学不活性ならせん高分子を設計・合成し、側鎖の両親媒性構造とらせん構造の安定性の関係について円二色性(CD)およびNMR測定などにより詳細に検討を行う。また、電子豊富な芳香族あるいは電子欠乏性の芳香族ユニットの自己組織化を介して官能基が配列制御されたらせん高分子の合成も行い、CDやNMR測定により、らせん構造が溶液中で誘起可能かどうかについて調べるとともに、液晶性や固体状態での構造を偏光顕微鏡やX線構造回折を用いて詳細に検討する。さらに、合成した様々のらせん高分子を用いた光学分割能や有機不斉触媒能についても併せて調べる。
|