2016 Fiscal Year Annual Research Report
柔軟構造化学センサーを目指した薄膜トランジスタの開発
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16F16347
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
若山 裕 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, グループリーダー (00354332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JEONG YESUL 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2016-11-07 – 2019-03-31
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Keywords | 薄膜トランジスタ / 二次元原子膜 / 強誘電高分子 / メモリ- / センサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は光・圧力・電界などに高感度で反応するセンサー素子もしくはスイッチング素子を開発することにある。特にフレキシブル基板上にこれらの素子を形成し、軽量で柔軟なデバイスを開発することを目的とする。この目標を達成するため、中心となる素子構造は薄膜トランジスタを基本とし、その半導体チャネル層に二次元原子膜の代表的材料である硫化モリブデン(MoS2)を用いることを特長とする。この材料はわずか原子層一層でも半導体材料として機能し、なおかつ柔軟で有りながら結晶が破壊されないという優位性を持つ。このMoS2薄膜を当グループで独自に開発した多段階化学気相成長法を用いて作製する。特に平成28年度はその成長条件の最適化に注力した。その結果、柔軟な構造でありながら高い電界移動度をもつMoS2薄膜の成長に成功した。さらにゲート絶縁膜として強誘電性高分子材料であるポリフッ化ビニリデンに着目した。この材料は双極子モーメントを有するため、電界によるメモリ効果や圧力に対する圧電効果が期待できる。本年度は特にこの材料の結晶性薄膜成長に取り組んだ。成長速度や加熱処理条件などを最適化することにより、結晶性薄膜の成長に成功しつつある。以上の結果から、柔軟構造を持ったトランジスタ素子の開発とそのメモリ機能やセンサー機能の基礎的な検討を進めることができた。平成29年度にはこれらの機能をより先鋭化することを目的にイオン液体などを用いたゲート電圧印加法に取り組む予定でいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
素子を構成する中心材料として半導体チャネル層としてMoS2薄膜、ゲート絶縁層として強誘電高分子薄膜を採用することとした。いずれも柔軟構造を有しながらも高い移動度やメモリ効果を有するという優位性がある。これらの材料の特長を活かすためには、まず高結晶性薄膜を成長する技術を確立することが必須となる。平成28年度にはこれら材料の成長条件最適化が進み、基本的な素子動作の確認まで到達している。以上の実験結果からいくつか解決すべき課題とその解決法なども明らかになり、今後の研究指針を明確にすることができた。研究を開始してからわずか半年の期間としては充分な進捗を得られたと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度での実験に引き続き、半導体チャネル層のトランジスタ特性の向上と強誘電高分子薄膜の結晶性向上を目的に薄膜成長条件の最適化実験を継続する。いずれの場合もまずは薄膜の表面形状を原子間力顕微鏡で観察することと、X線回折装置で結晶性を評価しつつ成長条件の最適条件の探索を進めていく。MoS2薄膜についてはソース・ドレイン電極を配線して、トランジスタ特性評価を実施する。この評価結果を成長条件にフィードバックする。なお、この段階ではゲート絶縁膜として、原子層堆積法を用いてAl2O3薄膜をMoS2表面に成膜する。これによりトランジスタの基本特性評価を進めるが、年度の後半にはゲート絶縁膜を強誘電高分子膜に置き換えてメモリ効果や圧電効果を検討する。強誘電高分子膜の結晶化条件については熱処理条件を変えつつ電圧-容量測定・電圧-電流測定を実施して、絶縁性と強誘電性を両立できる薄膜成長条件を見いだす。なおゲート電極材料としてはAuなどの金属材料を用いることを基本とするが、わずかな電圧で高い電界を発生できるイオン液体も合わせて検討する。以上の実験を進めることより平成29年度中にはメモリ効果と圧電効果を有する薄膜トランジスタ動作を実証する。
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